時は戦国。

諸将が、己の野望を胸に秘め、各地で立ち上がる、そんな時代。

されば、俺も天下統一を誓い……


「何言ってやがる、相沢」


……ごめん、嘘。















「相沢君の奇行は今に始まったことじゃないし、気にしなくていいわよ」


ごめん、香里……お前の優しさが、今はめっちゃ痛い……

いっそ、罵倒してくれよ……

俺、すんごく惨めじゃんかよ……


「それこそ今さらよ」


……泣いていいですか?

あ……ダメだ、もう涙が……あぁっ……


「泣くんなら、体育倉庫裏がお勧めだぞ。誰にも見られんですむし」


……泣いたことあるのか? 北川よ……


「まぁ、俺もあの頃は若かったのさ。そう、あれは……」


北川の過去、興味ないから言わんでいいぞ。

……で、名雪は?




















「くー」




















「これも今さらね」


名雪よ……自習時間は、勉強する時間なんだぞ? 決してお休みの時間じゃないんだ。

っつーか、幼稚園児でもあるまいに、よくもまぁ、こうも眠り続けられるもんだね。


「それが名雪よ」


理不尽な言葉なんだか、説得力に溢れた言葉なんだか。


「気にしたら負けよ」


……ところでよ、いつになったら、俺にも「」が与えられるんだ?


「さぁ?」


…………


「あら、あきらめたの?」

んなわけあるかぁっ!


ほっ……ようやく喋れた。

って、また逆戻りになってしまう?!


「いきなり大声出さないの。迷惑でしょ?」

「気にするな。俺は気にしない」

「私が気にするのよ」

「……祐一……」


ん? 名雪の声?! ば、ばかな! 名雪がこんなことで起きるわけが……


「お前も割とひどいこと言うんだな……」

「いいんだよ、嘘は言ってない」


そう、嘘も誇張も何もない。

あるのは真実のみ。


「……あ……ダメ……だよ、祐一……」

「あら……? 寝言みたいだけど……ずいぶんな言葉ね……」


うおぃ?! 何だ、その艶かしい発言は?! おい、名雪?!

お前そりゃ、周囲の皆様に、エライ誤解を抱かせちまうではないか?!


「お前ら……やっぱり……?」

「怪しいとは思ってたけど……」

「そんな目で見るな! 北川! 香里!」


やばい……このままでは、品行方正と言われた俺のイメージが……

ちなみに、言ったのは俺だけだ。

ツッコまれる前に言ってやる。


「あ……祐一……そのボタンは……あ、あ、けろぴーが……」


……ん?


「ダメ……だよ。食べられちゃうよ?」

「……何の夢だ? 一体」

「相変わらず、謎の感性よね」

「水瀬さんって……」


っていうか、名雪よ……食べられるのは、俺なのか? けろぴーなのか?

それ以前に、食べてるのは、俺か? けろぴーか?

どっちにしろ、俺に救いはなさそうだな。


「けろぴー、許してあげて……祐一も、悪気は……」

「あら。どうやら相沢君が食べられるみたいね」

「……」


無言で教科書を丸める俺。

こんな不届き者には、天誅を与えてやらねばなるまい。


「どうせなら最後まで聞いてみたいわね」

「相沢の命乞いとか聞けるかもな」

「バカにするない。俺にだってプライドってもんがある。たかが化けガエルなんぞに……」

「ほら……祐一も土下座して謝ってるんだし……許してあげて、けろぴー……」

って、何謝ってんだぁっ?! 夢の中の俺ぇっ!



――スパーンッ!――



泣いた……これは泣いた……

いくら人様の夢の中とは言え、カエルなんぞに頭下げてんじゃねぇよ、俺……

くそぅっ、あのふわもこ化けガエルが……放っておいたら図に乗りやがって。

帰ったら覚えてろよ……簀巻きにして、川に流してやる。

3年後に会おう。


「鮭じゃあるまいし……」















「うーん……何だか頭が痛いよー」


名雪が起きやがった。


「おい、名雪。なんつー夢見てやがる?」


そうだ。

そもそも、諸悪の根源はこいつじゃないか。

たかが夢に諸悪もクソもないだろうが、それはそれ、勢いってやつだ。


「え? 何で祐一が私の夢を知ってるの?」

「寝言だよ」

「わ、びっくり」


びっくりじゃねーだろが……


「よりにもよって、カエルなんぞに俺を食わせようとしやがって……」

「だ、だって、それは祐一が悪いんだよ? けろぴー怒らせるから……」

「待てこら。それは何か? 俺の立場はカエルよか低いってことか?」


何と……人様よりもカエルが上ですか、こやつの頭の中では。


「カエルじゃないよ、けろぴーだよ」

「どっちでもいい! 要は、俺の立場が低すぎんじゃねーのかってことだよ!」

「だって、けろぴーなんだよ?」


……頭痛がしてきた。


「……もういい」

「何がいいの?」

「何でもいい。どうでもいい」


もういいから、俺を1人にしてくれ……


「ムリね。今、自習中なんだから」

「あぁっ……神は死に給うた」

「相沢君って、キリスト教徒?」

「いんや。無宗教」


いいんだよ、そんな細かいことは。

それとも何か? 神を信じてないやつは、オーマイゴッド! とか言ったらいけねーのか?

俺は言わねーけど。





「祐一……」

「どわぁっ!」


びっくりした、びっくりした。

いきなり耳元に……って!


「舞……お前、何でここに?」


そう。

耳元で囁くように話しかけてきたのは、通称川澄舞。

ちなみに、正式名称も川澄舞だ。

もちろん上から読んでも下から読んでも……って、んなわけない。


「祐一、動物園に行きたい」

「はい?」




















祐一くん、振り回される





















「舞……今は、授業中なんだぞ?」

「大丈夫、私はもう卒業したから」

「俺が授業中なの」

「……大丈夫、邪魔しないから」

「っつーか、いきなり教室に入ってきた時点でまずいんだって」

「……何とかなる」

「ならない」


いくら自習中とは言え、教室にいきなり部外者が入ったりしたら、無意味に注目を集めたり……


「しないわね。皆寝てるし」

「何ぃっ?!」


何てこった……すでに、クラス全員が、nayukiに感染してたのか。

くそっ! もっと早く対策を練っていれば……

だから言ったんだ……事件は会議室で起こってるんじゃない、給湯室で起こってるんだ! と。


「どんな事件よ、それは……」

「ひどいよ、祐一〜。私、ばい菌じゃないもん」

「気にするな、名雪。悪い意味じゃない」

「どこからどう考えても、端から端まで、全部が全部、問答無用で悪い意味じゃない」

「余計な茶々を入れるな、香里」


折角、名雪を丸め込もうとしているのに、俺の邪魔をするつもりか?


「う〜〜……」


あ、ヤバイ! この唸り声は、第一種紅生姜警戒警報?!

仮にも警報なのに、対象が紅生姜のみってのが、いかにも俺らしくて、悲哀を誘う。


「マヌケなだけよ」

「うるさい、香里」

「祐一の今日の晩御飯は……」

「名雪、イチゴサンデー食べたくないか?」


ここは一つ、懐柔を狙うべし。

珍獣ナユキンの対処法として、これ以上うってつけのものはない。


「……5杯」

「3杯で手を打ってくれ。給料日前なんだ」

「あ、そうなんだ。じゃあ、3杯で許してあげる」


よしッ! トラトラトラ、我作戦に成功せり。


「相沢君、バイトやってたっけ?」

「やるわけないだろ?」


帰宅部で時間はあるけど、バイトなんてめんどくせーし。


「じゃあ、給料日って?」

「仕送りだ」


父さん、母さん……あなたの息子は、北の地で今日も逞しく生きてます。

いわゆる雑草魂ってやつだな。


「魂はいらないわよ」

雑草かよ?!


そりゃひどい! あんまりだ! 言うに事欠いて雑草はないだろ?!


「働きもせず、勉強もせず、部活もせず」

「いやぁ、今日はいい天気だなぁっ!」

「外、曇りだぞ。しかも、今にも降りそうだし」


お天道様まで、俺の敵になるのかよ……



――ビシッ――



「いてっ」

「無視しないで」


舞……強くしすぎだ。

星が散ったぞ?


「ま、いいや。で、何でいきなり動物園なんだ? この前行ったとこじゃないか」


そう、佐祐理さんと3人で、この前の日曜日に行ってきたのだ。

いやはや、あれは楽しかった。

何つっても、美人のお姉さん2人と一緒なんだからな。

楽しくないわけがない。

周囲の嫉妬の視線の気持ちいいこと。

あの時思ったね、俺が勝者だ、と。

舞と佐祐理さんが一緒なら、たとえ監獄の中でも楽しいはずだ。


「その場合、中にいるのが相沢君で、外にいるのが倉田先輩と川澄先輩ね」

「面会かよ?!」


俺が犯罪者?!

罪名は何なんだ?!


「聞きたい?」

「聞きたくない」


何なんだ? その、言いたいわ、と言わんばかりの視線はよ?

お前、普段一体俺をどんな目で見てやがる?


「残念ね」

「残念がるな」


って、こんなことしてると、また話が逸れるじゃないか。

舞の愛のチョップは、一発で十分だ。


「で、何でなんだ?」

「ぽんぽこたぬきさんが見たい」

「……あー、まぁ、その、何だ。よく聞こえなかったんだが、もう一度……」

「ぽんぽこたぬきさんが見たい」


聞き間違いじゃないらしい。

それとも暗号か? 舞が暗号なんて回りくどい手段をとるかどうかは、激しく疑問だが……

ふむ、試してみる価値はあるか。


「ないわよ」

「貴重な意見、感謝する。参考にさせてもらうことにしよう」


じゃ、まずは王道で、ぽんぽこたぬきさんをアルファベットに治すと……


参考にしてないじゃない!



――スパーーンッ!――



「おぅっ!」


香里……どっから用意した? ハリセンなんか……


「対相沢君用決戦兵器よ」

「なるほど」

「わかった?」

「さっぱり」

「……」

「嘘です。嘘ですから、その振り上げた右手は下ろしてください」


頼むから、無言無表情のまま振りかぶらんでくれ。


「で、舞。何でぽんぽこたぬきさん……いや、もう何を聞いていいやら」


冷静に考えれば、ツッコミどころ満載だ。

舞も、ボケとしての腕を日々磨いてるんだな。

相方として、俺は嬉しく思うぞ。


「相沢君、1人で浸るの止めた方がいいわよ」

「情緒を解さない奴だな……」


チッ……と、盛大に舌打ちなんかをしてみるテスト。



――スパーーンッ!――



「ったぁっ!」


本日二発目。

ハリセン大破。

よっし、ダメージは小さくないが、敵はこれで素手だ。


「素手の方が強いと思うんだけど……」

「名雪……わかってるから言うな」


全く、話が進まないではないか。

この責任の九分九厘は香里にありだぞ?


「残りの九割一厘は相沢君の責任ね」


うるせーよ。


「で、舞。一から説明してくれ」

「わかった」


神妙に頷く舞。

それを見て、俺達も気を引き締める。

先に進むのを恐れてたってしょうがない。

そうだ、恐れないーでーみーんなーのーたーめーにー♪

愛と、勇気だけーがーとーもだーちー……って、サムイな、おい。

あれか? “食”だの“カレー”だのは、友達と呼ぶにも値しないってことか? そりゃひでぇな。

“あん”だからって調子に乗りすぎじゃないのか? そもそも……



――ビシッ――



「ごめんなさい」


ちぇっ……ちょっとふざけてみたかっただけじゃないか……何もそんなに強く叩かなくったって……


「相沢君のちょっとが、宇宙規模なことはよくわかったわ」

「そんなことはないぞ。せいぜい銀河系規模だ」

「どのみち宇宙単位じゃない」


えぇいっ、一々細かいことを気にしやがって。

そんなこと言ってるから、いつまでたってもサブキャラなん……



――ドゴッ!――



「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」


ひたすらリピート。

シナリオが無いなんてことは言っちゃいけな……



――ボゴッ!――



「…………」

「あら、ちょっと強すぎたかしら?」


気にすんな、オロナイン一本飲めばすぐ治る。


「軟膏薬飲むの?」

「黙れ名雪」


言葉の綾だろ? 一々揚げ足とるな。

意味が通じないわけじゃないんだからさ。

いるんだよなー、こういう奴。

人の揚げ足ばっかとってさ。

そんな奴がいるから、話が進まないんだよ。

ギャグが白けるんだよ。

人が折角体張って笑いとってるのによ。


「っつーか、話が進まない原因は、相沢のしつこすぎるボケのせいだけどな」

「うるせーやい、北川のくせに」


立ち絵一枚程度の存在が、主人公に逆らっていいと思ってんのか?

身の程を知っとけ。

あれだよ、ジャ○アンがいつも言う、『のび○のくせに生意気だ』ってやつだな、うん。


「主人公、の○太だよ」

「だから、それが揚げ足取りだってんだよ! 名雪!」


くそぅ、名雪……天然恐るべしってやつだな。

にしても、あのセリフ、結構ヤバいよな……そもそも、映画の時だけ友情に厚い人間ってどうよ?

やっぱりあれか? 1話が、5分と2時間では、扱いが違うってことか?

友情の意味について考えてしまうな……





「って! えぇい、話が進まん! 舞、とにかく喋れ!」

「自分の責任なのに、いきなりキレられてもね……」

「香里は黙っててくれ」


お前が一番存在感強いんだよ。


「はちみつくまさんがいたから、だから、ぽんぽこたぬきさんもいるはず。だから見たい」

「えー……」


ごめん、問答無用で意味不明だ。

つまりあれか? 宇宙は膨張していて……


「関係ないわ」


じゃあ、あれだ。

量子論の世界において虚数の存在は……


「ムリしてわからないこと言わなくてもいいわよ」


うるせいやい、かっこよかったから言ってみたかっただけだよ。


「“無知の知”って言葉知ってる? 知ったかぶる方が恥ずかしいわ」


もういい。


「で、舞。一体何なんだ? もう何が何やら……」

「プーさん」

「ん? それって……」


あれか? あの、人語を解し、会話により他者とのコミュニケーションをとるという、進化論に真っ向から喧嘩売ってる、二足歩行蜂蜜喰らいのことか?


「それだけ聞いたら、ただの化け物ね」

「何か間違ったこと言ったか?」


少なくとも嘘は言ってないぞ?


「言われ無き誹謗中傷が混じってたと思うけど」

「気にするな、大したことじゃない」


あぁ、大したことじゃないとも。

そんなこと言ったら、某NHK教育で一時期やってた、某洋物SFコメディー番組はどうなる?

あれはヤバかったぞ? 嫌がるはちみつくまさんに目隠しして、銃殺刑にしたんだぞ?

まぁ、そのシーンは、直接描写されてなかったけどさ。

監獄の中から、主人公の1人が見て言ってただけだし。

まぁ、版権の問題があるから、出せはしないだろうけど、その発言はヤバいだろ。

問題がなかったのかね? 未だに謎だよ。


「それは言わないことね」

「了解」


確かに、色々ヤバいな、俺も。


「で、はちみつくまさんなわけか……」


ありゃ確かに、はちみつくまさんだな。

アイツに“さん”付けするのももったいないと思うんだがな……せいぜい“くん”止まりだろ?


「それは禁句よ」

「禁句か」


確かに、タイトルだからな。

これ変えたらまずいな。


「だから、ぽんぽこたぬきさんも、きっといる。祐一、捜しに行こう」


うーん、相変わらず舞は純粋だ……混じりっけのない白。


「相沢君は真っ黒ね」


うるせぃ。

いいんだよ、黒でも何でも。

大切なのはハートだからな。


「そのハートが黒いんじゃない」


……気にするな、気にしたら負けだ。


「気にしない時点で負けよ」





「で、舞。ぽんぽこたぬきさんだが……」

「都合が悪くなったら話を逸らして逃げる……減点1ね」


黙んなさい、美坂家長女。

っつーか、減点って何だよ?


「とにかくだ。舞、動物園にぽんぽこたぬきさんはいないぞ」

「捜してみないとわからない。祐一、一緒に行こう」

「だからな……」

「それに……私は、祐一と一緒に行きたい……」


ポッ、と頬を朱に染めながら言う舞…………萌えた。

何つーか、ご飯1杯半分くらいは楽に萌えた。

……我ながら、謎な評価だが。

単位も中途半端だし。















「……って、佐祐理に、言えって言われた」


チクショウ……! オチつきかよ?!

……でも、佐祐理さん、ナイスです。

今度会ったら、何かお礼します。


「で、とにかくだな。前に動物園に行った時もいなかっただろ?」

「……あの時、体調が悪かったのかもしれない」

「んなこたぁない」


グラサンがないのが残念だ。

どうせなら、ヅラ(以下自主規制)


「じゃあ、他の動物園に行ってみたら、もしかしたらいるかも」

「いない」

「祐一……私と一緒に行くのは、いやなの?」


潤んだ瞳の相乗効果!

クリティカルヒット!!

ゆういちのこころに、1200のダメージ!!

ただし、最大HPは120000、みたいなっ!


「つまり、大したダメージじゃないのね」


まぁ、そういうことだ。

何せ、最大HPが1200にして、12のダメージなんだからな。

ちなみに装備は、全部クリスタル製だっ!

どうでもいいが、何で、ダイヤ製の防具よりクリスタル製の防具の方が性能が上なんだ? ましてや源氏? 800年ぐらい前の装備が、現代の装備より凄いのか?

それはあれか? 人間は800年かけて退化したってことか? 現代文明に真っ向から喧嘩売るのは止めた方がいい。

そもそも、ダイヤ装備って何よ? 売れよ、そんなものよ……装備なんかしてんじゃねーよ。

っつーか、指紋べたべたされるだけで防御力激減だろ? もうちっと現実見ようぜ。


「ホント、どうでもいいわね」

「まぁ、たまにはな」

「……」


放置プレイッ?!


「で、舞。それも、佐祐理さんに言われたんだな」


ふふふ……香里よ、俺は放置プレイに耐性がついてんだよ。

いい加減慣れたわっ!

……自慢にはならんけどな。


「ホントにね」


えぇい、惑わされるな、相沢祐一。


「で、舞。そうなんだろ?」

「……違う」


悲しそうな目。

まるで捨てられた子犬のような、寂しさと哀しさに満ちた視線。

アイ○ルのあの犬なんて目じゃない。

どうでもいいが、アレ、引っ張りすぎだと思う……1回ヒットしたからって、何度も繰り返されてもなー……何匹目のどじょうだよ?

で。


「うぅっ……!」


会心の一撃!!

ゆういちのこころに999のダメージ!

ただし、最大HPは12、みたいなっ!


「というよりも、自分が悪だって自覚はあったのね」


もしかして、墓穴……?

でも、そうなんだよな……あれ、敵と味方じゃ言葉が違うんだよな。

っつーか、痛恨の一撃って言い方、ひどいよな……敵にしてみれば、会心の一撃なのにさ。

大体、何でもかんでも、モンスターは悪だって決め付けるのもどうかと思うぞ?

人間の都合で、勝手に勧善懲悪にしちゃってさ。

そもそも、人間だって、モンスターのテリトリーを奪って、国を作ったんだろうしさ、進化の過程を考えると。


「やめなさい、物語を根底から揺らがしかねないツッコミは」

「そうだな……これ以上敵を増やすような発言は控えんとな……」


根強いファンの多い作品をこき下ろすのはまずいな、確かに。

や、でも、ほら、好きだからこそって部分もあるじゃないですか。


「少なくとも、今のあなたの言葉には、悪意しか見えなかったけど」


いいんだよ、ネタになれば。

ギャグセンスの足りない人間が、無い知恵絞ってんだ、少しは大目に見てくれてもいいだろう?




















「……って、ここまでやれって、佐祐理が」

「シナリオかいっ?!」


ご丁寧に、台本用意してんなよ……っつーか、誇らしげに見せられてもなー。


「さすが、相沢君の相方ね。いい勝負だわ、相沢君と」


どっちかって言うと、名雪といい勝負だろう。

天然VS天然。

まぁ、おそらく、6cm差で……



――ズゴッ!――



「懲りないわね……」


心底呆れたような香里様の声。

あ……泣きそう。

ふん、違うもん、涙じゃないもん、心の汗だもん。


「祐一、とにかく行こう」

「まぁ待て。そんなに焦らなくても……」

「泊りがけで」


…………これも佐祐理さんの引っ掛けだ、そうなんだ。

だから、騙されたりしないぞ? ほ、ほんとだよ? 心動かされたりしてないよ?


「うわー、目がすごく泳いでる」

「別の意味で嘘のつけない人間ね、相沢君は」


……ほ、ほんとなんだってば。





「さて、とにかくだ」

「強引な話題転換、何度目かしらね?」

「いらんツッコミありがとう」

「何なら撃墜マークでもつけましょうか?」

「いらん」


心底いらん。


「舞は、ぽんぽこたぬきさんが見れたらいいんだろ?」

「うん」


舞の期待に満ちた眼差し。

目なんかきらきら輝かせちゃって……

くぅ〜、舞はかわいいなぁ、やっぱり。


「その純粋無垢な川澄先輩の希望を、相沢君が木っ端微塵にしちゃうのね、これから」

「バカにすんな」


俺だって、やる時はやるぞ? それは、シナリオが証明してくれてる。


「逆に言えば、やる時以外は、単なる役立たずってことね?」


ぐさっときた。


「祐一……ぽんぽこたぬきさん、見たい」


くいくい、と袖を引っ張りながら舞。

落ち込んでる暇なんてないね。

元気3倍だ……微妙な数字だな。


「0を何倍しても0よ」


0じゃねーやい、1くらいはあるよ!


「じゃ、結局3止まりね」


気にしない気にしない、一休み一休み。


「悪行を悔いて出家するつもりにでもなったのかしら?」

「それでだな、舞。今からレンタルビデオショップに行くぞ」

「何で?」

「ぽんぽこたぬきさんが見たいんだろ? って、そこ! ホントに撃墜マークつけてんじゃねーよっ!」

「残念ね」


そんなに残念そうな顔せんでもいいだろ?

まるで地球が滅亡したかのような……


「そこまで残念でもないわ」

「そうかい」





ガタッ、と机から立ち上がる。


「よし、舞。行くぞ」

「わかった」

「って、わからないでください! 川澄先輩!」

「いきなり発言するな、名雪。発言したいなら、住所、氏名、年齢、電話番号を明記の上、次のあて先までお送りくださ……」

「誰も聞いてないわ」

「さいですか……」← (´・ω・`)ションボリ

「祐一はまだ授業中ですよ?! 自習とは言え、勉強するための時間なんですよ?!」

「思いっきり寝といて、どの口がそんなこと言うかね」

「それが名雪よ」





 Oh Yes! It's Nayuki!





「別に英語で言う必要はないわよ。英語の成績3なんだからムリしないの」

「何でお前が俺の成績知ってんだよ?!」

「あら? ホントに3だったの?」


まぁびっくり、と言わんばかりの表情は止めろ。

傷つくから、俺のプライドとか俺の尊厳とか俺の誇りとか。


「元から無い物は傷つきようがないわよ」


じゃあ、この心の痛みは何なんだよ?


「錯覚か幻覚か気の迷いか若気の至りか」

「待て、4つ目は関係ないだろう」

「いいのよ、この際どうでも。話題が相沢君のプライドとかだし」


何だよ、その、『あんたのプライドなんか、道端のフライドポテトよりどうでもいいわよ!』、と言わんばかりのセリフは。


「道端のフライドポテトって何よ?」

「……何だろう?」


これは謎だ。

どうでもいいが。

って、そうだ。


「とにかく、舞。行くぞ」

「わかった」

「って、わからないでください! 川澄先輩!」

「いきなり……」

「無限ループは感心しないわね」

「サンキュー香里」


確かに、何番煎じだよ? って言われちゃうよ、こんなこと繰り返してたら。


「祐一! 勝手に帰っていいなんて思ってるの?」

「何が悪い?」

「あなたの根性、あなたの性根、あなたの性格、あなたの……」


無視!


「フォントをでかくすりゃいいってもんじゃないだろ?」

「何だ、いたのか、北川」


忘れてたよ、存在を。

いや、作者がね。

まぁ、俺もだけど。

……いじけんな、北川、キモい。


「祐一、帰っちゃダメだよ! 私のイチゴサンデーをどうするつもり?」


お前の都合かよ?!


「わかったわかった。また明日奢ってやるから」

「じゃあね、祐一。夕ご飯までには帰ってこなきゃダメだよ?」


早ッ!


「っつーか、俺は子供か?」

「だとしたら、ずいぶん性質の悪い子供ね」

「外で買い食いしちゃダメだよ?」

「聞いてんのか? 名雪」

「ハンバーガーとか、お持ち帰りもダメだよ?」

「大丈夫だ、別にみゅーはいない」


……みゅーって何だ?





川澄先輩のお持ち帰りもダメだよ?」

んなことするわけねーだろがっ!!


速攻でバレるしな。


「あまつさえ、ご休憩なんて、もってのほかだよ?」

「……シナイヨ」


一瞬心が動いてしまったのは、内緒だ。

バレないかもしれないし、とか考えたり考えたり考えたり……つまり考えたわけだ。


「声が裏返ってる……」


内緒になってなかったらしい。

まぁ、失敗は成功の母とも言うし。



――ビシッ!――



「……そんなこと、しない……」


顔真っ赤だぞ……舞。

あー、やっぱりかわいい、舞。

もー、2人っきりだったら押し倒してるぞ? いや、マジで。

実際には何もできないけどね、今は。

所詮ギャグさ……





「わかったわかった、じゃあとりあえず、ぽんぽこたぬきさんが目的なんだろ? それなら行かないとな、いい加減に」


そろそろネタが限界だから、という理由は、公然の秘密だ。


「それって、秘密でも何でもないわよ」


いいんだよ、勢いだ。

ギャグSSなんぞに、整合性だの妥当性だのを求めるんじゃない!

ましてや、作者がアレだぞ?


「それは確かにね」





「おい、相沢。どこに行くんだ? まだ授業時間は終わってないぞ?」

「すいません、先生。猛烈な腹痛が……」

「あれだけ意味のない会話繰り返しといて、今さら……」


黙れ、香里! 俺の演技を無にする気か?!


「そうか、それならしょうがないな」

って、信じるの?!

「すいません、先生……」

「気にするな、相沢……俺もよくやったもんさ、早退なんてな」

「あぁ、信じたわけじゃないのね……良かったわ」

「あんまり良くもないだろ?」


だから黙れって、北川。

触覚って呼ぶぞ?


それは止めろ!















そんなこんなの手に汗握る一大スペクタクルを乗り越えて、ようやくたどり着いた魔王の居城で……


「祐一、しつこいのは嫌われる」

「ごめんなさい」


とにかく、レンタルビデオ店で、ぽんぽこたぬきさんのビデオを借りて、舞に渡した。

ん? あれだよ、スタジオ○ブリのやつだ。

ついでだから、となりの何たらだの、風の谷のどうたらだの、天空のこうたらだのも、一緒に借りてやることにした。

結果、舞は大満足。

一番気に入ったのが、となりのホニャララのふわもこだったらしい……って、これじゃ特定できんな。

まぁ、舞だし、どれもお気に入りだろうから、特定も何もなかろう。

で、佐祐理さんの話では、1日に3回は見てるらしい。

そんなバカな、とか思ってたんだが、実際に遊びに行った時、ホントに延々と見続けてたからな、舞は。





それはいいんだ。

舞が喜んでくれて、俺も嬉しい。

けどな……




















じゃあ、今までの話は何だったんだ?




















そんな呟きが空に消えた午前零時。

ちなみに、舞はまだ見続けている。

どうやら、まだまだ俺は付き合わねばならないらしい。

……これがオチってどうよ?











後書き



はい、初めてのギャグオンリーSSです。

ギャグはムズいッッ!! ってのが、まず最初の感想ですね。

いや、楽しかったですよ、正直。

シリアスばっかり書いてるとマンネリになるんで。


と、まぁ、まるでストレス発散の副産物のような、ヘボSSですが、受け取っていただけますか? K9999さん。

構想1日、執筆3時間の、できそこないです……ホントどうしようもないな。

ちなみに、返却は不可ということで……お願いしますね? いや、マジで。

何というか、ギャグSS書くのって大変だなー、と気付くと同時に、ギャグSSを専門に書いてる人の偉大さを知りました。

日常的に面白いギャグなんて書けないですよ、ホント。


さてさて、前の2作が、ともにびみょーなSSだったので、1度くらい、載せてくださってるK9999さんを煩わせない作品を書かねば、とか思ってたのに……

これ、どうしましょう?


ジャンルは? ギャグです。

ヒロインは? 舞……かな?

……結局びみょーだな、今回も。

で、でも、ラブラブにシリアスにギャグに、と、色々やってるんだから、これはこれでいいんじゃないかなー、とか。

単純に節操がないだけ、というツッコミはご勘弁を。


あ、ちなみに、途中で書いた某NHK教育の話は、実話ですよ。

もしかしたら、知ってる人いるかもなぁ……

NHKなのにやけに下ネタが多くて、おいおい大丈夫かよ?! とか心配してみたり。

今となっては、いい思い出です。

知ってる人いたらいいなぁ、とか期待してみたり。


えー……というわけで、まぁ、よろしければ掲載してやってください。

それではこれにて。





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