「むぐむぐ」

「もぐもぐ」

「……美味しいです」


久しぶりの宿での食事。

茜もたまには炊事から解放。

けれど。


「おぉ、美味しいな」

「うん、美味しいね」

「……その目は何ですか?」


ちなみに、これは朝食ではない。

昼食なのだ。

さてさて、それではどうして、朝食風景ではないのだろう?

答えは簡単。

“そんなものはなかったから”


「あぁ、日が高いな」

「買出し大変だったね」

「……2人とも意地悪です」


いつものテントと違って、久しぶりのふかふかのベッド。

それでなくても朝に弱い茜が、この誘惑に勝つことがいかに難しいか。

それをよく知る2人の言葉に、拗ねた茜の声が重なる。

結局、茜が朝に起きることはなく、とりあえず買出しだけは済ませておこう、と祐一&詩子が街を回っていたわけだ。


「まぁ、いつものことだしな」

「うん、いつものことだね」

「……しょうがないじゃないですか」


やっぱり意地悪な祐一&詩子と、唇を尖らせた茜。

昼の食事風景に、笑いというスパイスが加わった。

いつものことというだけはある……気付けば、茜も笑顔になっていた。















のんびりお気楽夢紀行


5ページ目  仕事を探せ















「さて、じゃ、仕事を探してみるか」

「どんな仕事があるかな〜?」

「鉱山があるわけですからね……いい仕事があるかどうか、ちょっと不安ですね」


鉱山で働く鉱夫、という仕事ならあるかもしれないが、茜や詩子にはこれは不可能。

3人でできる仕事であることが、やはり望ましい。

魔物退治や犯罪者撃退、あるいは誰かの護衛など……こういう仕事が一番良い。

仕事内容もさることながら、報酬が高いところもポイントだ。


「じゃ、まずはギルドに行ってみるか」

「おっけー」

「はい」


そして、宿をチェックアウト。

その足でギルドへと歩いていく。





ギルドとは、一言で言うと、旅人のために短期の仕事を斡旋する所である。

基本的に、登録さえしてしまえば、世界中どこのギルドでも仕事を紹介してもらえる。

けれど、誰でもどんな依頼でも受けられるわけではない。

仕事の結果はギルドに登録されているため、成功率の低い人間では、やはり仕事を受けさせてもらえないことがあるからだ。

まぁ、幸い祐一達3人は、割かし高い成果を上げているため、ギルドの信頼は結構高かったりする。





「でもなぁ、この街って割と平和っぽいしさー」

「うん、確かにね〜」

「……行く前から諦めないで下さい」


治安も良く、街の近辺に住む魔物もそこまで強力ではない……こうくると、望む仕事があるかどうかが不安になるのも仕方がない。

けれど、茜の言う通り。

まずは行ってみなければ始まらない。

とっとことっとこ。

のんびりとした足取りでギルドまで。










「ん〜……微妙だな」

「だね」

「ですね」


そんなこんなでギルドに到着。

まずは恒例、探し人の情報がないかの確認。

けれど情報一切なし。

残念だけどしょうがない。

そう簡単に見つかるはずもないし。

くよくよ悩むのはムダなこと。

常に前向き、これが大事。



気持ち切り替え仕事探し。

さてさて募集を見てみると。

やっぱり鉱山での働き手など、力仕事が多かった。

しかししかし、祐一達の望む仕事もあったにはあった。


「どうする?」

「う〜ん……」

「……」


複雑な表情で悩む3人。

何をそんなに悩むのか?


「結構リスク高いよなー……」

「いろんな意味でね」

「……魔物の巣の殲滅ですか」


そう、祐一達の望む種類の仕事はこれだけ。

じゃあ受ければいいじゃないか、と簡単に言うわけにはいかない。

祐一の言う通り、危険度は結構高い。





魔物達にだって、生活ってものがある。

魔物の巣の殲滅とはつまり、その生活を完全に破壊し、その場にいる全ての魔物を撃退しろ、ということ。

そうなると、街道で出会う魔物とは話が違ってくる。

戦う場所は相手のホーム。

しかも場所がそうである以上、相手も自分の生活を守るため、死に物狂いになるだろう。

とにかく色々な意味で危険度が高い。





「……ん? これって単独任務じゃないな」

「あ、ホントだ」

「まぁ、危険度を考えれば当然でしょうね」


単独任務ではない……これは、早い話が募集人員が多いということ。

魔物の巣に襲撃をかけようとするならば失敗は許されないからだろう。

何せ、中途半端に攻撃を仕掛ければ、報復も考えられるのだから。

ならば、攻撃に参加する人間は、質も量もある程度はほしいところだ。


「でも、今んとこ誰も受けてないな」

「ありゃりゃ」

「それはしょうがないでしょう」


まぁ、他にも仕事があるのに、何もそんな危険度の高い仕事をすることもないだろう、ということか。

他の仕事は、割とすぐに引き受ける人間が現れていることからも、それが窺える。

祐一達にしても、できればこんな仕事はしたくない。


「なんかなー……」

「どーする?」

「……」


2人の視線を受けて、茜が考え込む。

決断はいつも茜。

まー、要するに、茜がリーダーだということだ。

それ故に、慎重に考える必要がある。

3人の命に関わる問題なのだから。

間違うことは許されない。










「仕事あるかな?」

「どんな仕事でもいいわ。ヤな部分は全部コイツにやらせるんだし」

「何?! お前、それは酷いぞ?!」

「何よ、昨日の失態を忘れたとは言わせないわよ?」

「そうだよ。たまたま親切な人がいてくれたから良かったけど、そうじゃなかったら大変なことになってたんだよ?」

「ぅ……」


頭を悩ませてるそんな時に、ギルドに新しい客がやってきたようだ。

これまたずいぶん騒々しいチームである。


「「?」」

「……うるさいです」


単純に疑問顔の祐一&詩子と、少しムッとした感じの茜が、入り口に目を向けると、そこにいたのは男女の3人組み。

何やら自分達とおんなじ構成。

そのうちの1人が、やけに見覚えがあるような。


「「「あ……!」」」

「「「ん?」」」


そこで、3人と3人の視線がばっちり合う。


「あ、あなた達、昨日の……」

「え? あの人達が?」

「何? あいつらだったのか」


そんなことを驚きの表情で言う3人。


「えーっと、七瀬……だったっけ?」

「やっほー♪」

「奇遇ですね」


確かに奇遇とも言えるが、よくよく考えれば、旅人ならば、ギルドで会うなんて別に珍しくもなんともないこと。

昨日の別れ際のセリフを、少し恥ずかしく思ってしまったり。

ともあれ、早すぎる再会とタイミングのズレた出会いの瞬間だった。










「ホントに昨日はありがとね」

「えっと、あなた達が留美の言ってた相沢君と里村さんと柚木さんだね。昨日は本当にありがとう」

「うむ、感謝してやろう!」


女の子2人はともかく、胸を張ってずいぶん尊大な態度の男の子。

けれど、そのことを祐一達がツッコむ前に、留美の鉄拳が炸裂。

軽い冗談1つでそこまでしなくても。

けれどまぁ、他所様のチームには他所様の方針があるのだろう、と考え、祐一達は意図的に床にめり込む男の子を無視。


「えー……っと……」

「あ、私は長森瑞佳。それで、こっちが折原浩平だよ」

「みずか……ですか?」


少し疑問顔の茜。

瑞佳とみずか……確かに発音は同じだから、疑問に思うのもしょうがない。

そりゃまぁ容姿は似ているが、年齢が違いすぎる……同一人物なはずがないのだ。


「あ、漢字とひらがなの違いはあるんだよ」

「ふ〜ん。あ、で、みずかちゃん元気?」

「えぇ、大丈夫よ。今は宿の方でお留守番だけどね」


笑顔で詩子の疑問に答える留美。

とりあえず、そこから和気藹々と話が弾んでいったのだが……





「……いてて……おいっ! 七瀬! 少しは手加減しろっ!」


全員から無視されていた浩平が、ようやく再起動。

ちょっぴり涙目なのは、打撃のダメージか、忘れられてた寂しさか。


「あんたが調子に乗るからよ」

「浩平が悪いよ」


2人の容赦のない言葉。

まぁ、自業自得というやつだろう。

だから、祐一達もやっぱり気にしない。


「で、あんた達もやっぱり仕事を探しにきたんだよな?」

「えぇ、そうよ」

「あなた達もそうなんだよね?」

「はい……ただ、少し問題が」


茜が言葉を濁す。

色々とシミュレートしてみても、やはりリスクは高い。

別の街にいくだけの路銀は十分にあることを考えると、ここでそこまで危険を冒さなくてもいいのでは?

そんな風に思う。


「問題?」

「魔物の巣の殲滅の依頼があるんだけどね……ちょっと手強そうだし、どうしようかなって」


首を傾げる瑞佳に説明する詩子。

危険のない仕事はないとは言え、危険度が高い仕事は、やはり避けた方がいいように思える。

旅の目的だってあるのだ……そう頻繁に命の危機に陥ってはいられない。





「魔物の巣の殲滅……いいわね」

「うん、いい仕事があったんだね」


だがしかし、驚いたことに、2人の少女はむしろ乗り気です。

呆気に取られた表情の祐一達。


「七瀬の血が騒いでるな……さすがは男の中の男」

「誰が男よっ!」



――ドゴッ!――



不用意な発言は身を滅ぼします……なぜか、そんな言葉が頭に浮かぶ祐一。

ちらりと茜&詩子に目を向ける。


「ん? 何?」

「どうかしましたか?」

「いや……」


自分の旅の仲間がこの2人で良かった……柄にもなく神に感謝してみたりする。

まだ疑問顔の茜&詩子だったが、とりあえず大したことではないだろうと判断し、改めて瑞佳達の方を向く。


「危険ですよ?」

「そうだよ。いい仕事じゃないでしょ、いくらなんでも」


心配気な声音の2人。


「あ、大丈夫だよ。慣れてるし」

「そうそう。それに報酬も相当に高いしね」


しかし、意にも介さない2人。

確かに、危険度が高い分、報酬もまた相応に高い。

今回の仕事の報酬も、金貨が60枚……普通の人間が稼ごうと思えば、2,3ヶ月はかかる金額だ。


「はっはっは、心配はいらんよ、お嬢さん方。俺達は強いからな」


早くも復活した浩平。

その回復力の高さは、その強さの賜物なのか?

ちょっぴり情けない気もするけれど。


「えーと……あ、単独任務じゃないね」

「まぁ、当然ね」


どうやら本気でこの仕事をやるつもりらしい。

祐一達の表情は、やはり驚きに染められている。





「あ、それならさ、あなた達もこの仕事、私達と一緒に受けない?」

「あ、それいいね」

「うむ、確かに」


と、そんなことを言ってくれた浩平達。

それを聞いて、さらに驚きを大きくする祐一達。


「「「はい?」」」


思わず知らず、3人の声がハモる。


「これなら危険度も減るし」

「仕事も楽になるし」

「山分けにしても十分高い報酬だしな」


何だか当たり前のように話を進める浩平達。

どうやら、この3人の中では、もう決定しているらしい。

祐一達、慌てる慌てる。


「ちょ、ちょっと待ってくれって」

「そうだよ。そんな簡単に……」

「そうです。大体分かっているんですか? 報酬がどうとか以前に、失敗が許されない仕事なんですよ?」


軽い調子の3人をどこか諫めるような口調の茜。

もし仕事に失敗したら、自分達だけでなく、この街の人間にも危険が及ぶ可能性もあるのだ。

それを、そんなに簡単に決めてしまうなんて……


「大丈夫だよ。こう見えても私達、経験豊富なんだから」

「そうよ。こんな程度で遅れをとったりはしないわ」

「それによ……結局、誰かが受けなきゃならないんだぜ? それなら、少なくともそれなりに腕の立つ6人がいる今回がチャンスじゃないのか?」


浩平の言葉に祐一達が反応する。

魔物の巣を放置しておくわけにはいかない……だからこそ、ギルドに依頼がきたわけだし。

となれば、確かに今潰しておくべきだろう。

浩平の言うように、今は少なくとも6人はいるのだから。





「よし。茜、詩子、受けよう」

「……そうだね」

「……わかりました」


祐一の言葉に2人も頷く。

それを見て嬉しそうに笑ったのが瑞佳と留美。


「決まりね」

「よろしくね、相沢君、里村さん、柚木さん」

「おう。じゃ、ま、頑張ろうぜ」


何やら友情が生まれたような、そんな気配。

それを感じて、祐一達も表情を和らげる。


「おう、こっちこそよろしくな」

「うんうん、よろしくね」

「よろしくお願いしますね」


そして、ギルドのカウンターで、正式に依頼を受けることに。

さぁ、もう逃げ道はなくなった。

危険な魔物達を撃退するまで、旅はひとまず一休み。

でもでも、終了の暁に待つものは、何と金貨が30枚。





「じゃ、詳しいこととか打ち合わせしましょう。とりあえず私達の宿に来ない?」

「わかった。じゃ、そうしよう」

「いっそ、そこに私達も宿とろっか?」

「そうですね」

「あ、それがいいよ。みずかも喜ぶし」

「よっし、決定!」


やってきた時の騒がしさそのままに、人数を倍にして、ギルドを出て行くご一行。

やっぱりどうにも目立ちすぎ。

まぁ、そんなことはどうでもいいさ。

まずは目の前の難題を突破しよう。

さてさて、明日はどんな風が吹く?


















後書き



こんにちは、GaNでっす。

前回で予想できてた人は多数でしょうが、浩平チームのご登場です。

浩平×(瑞佳+七瀬+みずか)、実現させてみました〜。

こう、ファンタジーの中のチームってんなら、こんな編成もありでしょう、とか。

とりあえず、肩の荷を降ろせた気分(え?)

にしても、Kanonキャラはまだか、と言われるかもしれませんね。

や、ど〜しても、この4人を出したかったんですよ。

結果、Kanonキャラは後回しに。

もうホントそれだけの理由です。

えー……ごめんなさいです。



さて、次回どうするかな〜?

まだ細かいとこは全く決まってません。

まぁ、気長にお待ちいただければ……

ボチボチ仕上げていきますんで。

それでは、また次回にお会いしましょう。





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送