「げほっ……」


激痛がさらに強くなる。

呼吸しようとするだけでも、体が悲鳴を上げるくらいに。

胸の奥から、熱いものが逆流してくる感覚。

少なからず臓器を傷つけていることは間違いないだろう。

それでも、どうにか剣によりかかるようにすることで、倒れることだけはしないですんでいた。

だけど。


『ゲシシシ……シシ、シシシ……』


目の前で、焦らすように腕を振りながら笑うゴーストに、祐一は何もできない。

もう、腕も上げられない。

歩くことなんて論外だ。

どうにか、睨むように顔を上げているだけでも精一杯だった。

唇を強く噛み締めながら、何かを必死で堪えるように。



ぽたっ……と。

透明な雫が落ち、地面に染みを作り、それはすぐに吸い込まれ。

そして吸い込まれたら、またその上から新たな雫が落ち。

ただ繰り返されるそんな光景。

嘲笑うゴースト、動かぬ香里、動けぬ祐一。



だが、そんな停滞も長くは続かない。

ゴーストも、いい加減飽きたのだろう。

ふらふらと見せびらかすように動かしていた腕を、静かに香里に近づけていく。

そして、それはそのまま彼女の首を強くつかんだ。





「……ぅっ……!」


香里の口から発せられる、押し潰されたような苦悶の声。

首を締めつけられている……それが、何よりもはっきりと分かる声音。

精神に干渉されているわけではないらしいが、いずれにせよ、このままだと、ほどなくして死に至ることだろう。

ぎりぎり……と。

まるで締めつける音が聞こえてくるような、そんな錯覚さえ覚える祐一。

それでも、祐一にはもう何もできない。

どんなに願っても、もう何も。

脳裏に響くその音は、自分に敗北感と無力感を味わわせるために出ているかのような、そんな気までしてくる。


「……っく……しょ、う……! げほっ、ごほ……っ……」


口いっぱいに広がる鉄の味。

朦朧としてきた意識。

もう、悪態をつくことさえできない。

言葉を発するたびに生じる激痛に、体が耐えられない。

気を抜けば、すぐにも崩れ落ちそうな状態。



剣は通じない……それ以前に、もう動けない。

魔力は使えない……自分の力のはずなのに、これっぽっちも出てこない。



もう、打つ手はない……微かに聞こえる香里の呻き声に、絶望と無力感を抱くのみ……

ただ、最後の瞬間を、眺めるのみ……

心の中で、ただ、呟くのみ……















……ナンテ、ムリョク……ナニモデキナイ……ダレモマモレナイ……






オレハ…………ムリョクダ…………
















のんびりお気楽夢紀行


22ページ目  それぞれの精一杯















「……ぁ……」


酸素を求め、震えながら開かれた香里の口は、しかし何も得ることができない。

微かに見せていた抵抗の動きも、どんどん弱くなっていき、やがて終わりの時を迎える。

もう指一本さえ自分の意思で動かすことができない。

鈍ってゆく思考。

落ちてゆく感覚。

あぁ、あたし、死ぬのね……と、それを理解してしまう。

死へのカウントダウンが進むその中で、彼女が何よりも想うのは……最愛の妹、栞のこと。



帰るって、そう約束したのに。

夢を叶えてあげるって、そう誓ったのに。



それも、もうムリっぽい。

自分の人生は、ここでピリオド。

そんな風に思うと、悔しかった……悔しくてたまらなかったけど、でも……



何もできない。



霞む視界……ゴーストの姿を見ないで済むだけ、まだマシかもしれない。

薄れ行く意識……手放すその直前に、申し訳ないという思いが過ぎる。

栞に……父に……母に……そして、祐一達に……


「…………」


その思いさえも、言葉にできない。

そして、香里の首を締めつけるその腕の力が、いよいよ強くなる。

絞め殺すのではなく、もはや首を千切らんばかりの勢いだ。

けれど香里はもう、それに苦悶を示すことさえない。


『シャー……ッ!』


悦びの表現なのか、ゴーストの声が、一段高くなる。

それはもう、香里の耳には届かず。

それはもう、祐一の心にも届かず。

ゴーストの笑い声も、絶頂に達した……




















と。


「祐一っ! 香里っ!」


誰かの声と同時に、凄まじい勢いで飛来した炎が、香里の首に巻きついていたゴーストの腕に絡みつき、一気に燃やし尽くす。

それは一瞬の出来事。

反応さえできないゴースト。

次の瞬間。


『ギ……ィアァッ!』


明らかな苦悶の声が、ゴーストの口から吐き出される。

歪んだ口元……それは明らかなダメージの証。

炎が突き刺さった腕の部分は完全に燃え落ち、意識を失った香里の体が、まるで糸の切れた人形のように、力なく大地に沈む。

生きているのか死んでいるのか、それさえもわからない。


「っ! あんたが……っ!」


目の前に現れた人物……詩子が、彼女にしては珍しい、明らかな怒りの表情で、目の前で悶えるゴーストを睨みつけ、吐き捨てるように言葉を発した。

苦しむゴーストの先には、身じろぎさえせずに崩れ落ちている香里と、血を吐いた状態で今にも倒れそうな祐一。

共にその表情は蒼白で、生気に乏しい。

そんなボロボロの状態になっている香里と祐一の姿を見て、心穏やかでいられるわけがない。

こみ上げてくる怒りという名の感情に、止め処なんてあるわけがない。

燃えるような彼女の目が、射抜くようにゴーストに注がれる。


『ゲシィッ!』


一瞬混乱していたゴーストだったが、すぐに怒りの形相に変わり、バッと詩子の方へ向き直ると、残っている左腕を感情のままに振り抜いた。

そのスピードは、今までの遊びのそれではない。

明らかな本気。

紛れもなく怒りの為せる技。

けれど。


「あんただけは、絶対に許さないんだからっ!」


詩子の怒りは、それよりもなお強い。

普段の軽い調子は完全に形を潜め、敵意を隠そうともせずにぶつけている。

怒りの形相のまま、魔力を両腕に集中してゆく。

完全に、本気。

今の詩子に、容赦はない。





風を切り裂くようにして、凄まじい勢いで左腕が迫るが、詩子の目に焦りの色はない。

素早い身のこなしでそれを難なく回避すると、そこから追撃がくる前に、自身の間近にあるその腕へと、両腕に宿る炎を叩きつける。

瞬間、炎に包まれる左の腕、左の闇。

魔力の蓄積から発動までが、おそろしく早い。

その速さこそが、詩子の本領。

そしてスピードで上回られては、魔力にほとんど耐性のないゴーストに、反撃の余地などない。



あっという間に、両腕を失ったゴースト。

一瞬呆然とするも、すぐにそれは驚愕に変わる。


『ゲッ……ゲァァァァ……ッ!』


もはや言葉にもならない叫び。

苦痛の声。

闇が苦悶に震える。

けれど詩子は止まらない。


「あんたなんかぁっ!」


叫んだ瞬間に、彼女の両腕が、再度炎に包まれる。

それは凄まじい熱量。

魔術に弱いゴーストには、まさに致命的と言えるほどの魔力。





『ヒッ、ヒィ……ィアァ……!』


ゴーストの声に、初めて恐怖の色が滲む。

目の前の炎が、自分を優に消滅させ得るだけの威力を持っていることがわかるのだろう。

逃げるように後ずさる。

けれど。





「消えちゃえーっ!」


スピードは、間違いなく詩子の方が上なのだ。

逃がしてなるものかとばかりに、彼女は瞬時に駆ける。

あっという間に射程距離に入ると、両腕の炎の塊を、その勢いのままゴーストにぶつける。





『ゲァアア……ッ! アッ、アッ、アツ……ア……ァ……』


燃え盛る炎。

身悶えるゴースト。

空気をも焦がすかのようにしながら、ゴーストの体は燃え落ちていく。

闇が炎の紅に染められ、どんどん消えていくのがわかる。

ゴーストの苦悶の声までも焼き尽くさんばかりに、炎が渦を巻いた。

闇はどんどん炎に呑みこまれていき、その炎もまた無に帰ろうと少しずつ薄れていく。

やがて、炎と共に、闇が今度こそ完全に消滅した。

ゴーストの死……呆気ないほどの幕切れ。










「祐一っ! 香里っ!」


遅れてやってきた茜が、詩子に追いつき、2人並んで祐一と香里の近くまで駆け寄ってくる。

と。


「俺よりも、先に、香里……を……」


祐一が、俯いた状態でそれだけを言葉にする。

その言葉はかすれており、彼もまた、相当な重傷を負っていることがすぐにわかる。

素直に受け取るならば、それは香里を先に回復してほしいという意思を感じさせる言葉。

けれど同時に、自分のことを放っておいてほしいという……どこか自虐的な意思も感じさせる言葉。

何か言いたそうな詩子は、しかし茜に遮られ、仕方なしに、まず祐一の願い通り、香里の元に向かう。





「ひどい……」


悲痛な表情で声を詰まらせる詩子。

香里の首には、ひどい鬱血が見られ、相当に強く締めつけられていただろうことが、瞬時に見て取れる。

あまりにも痛ましい姿。

注意しなければ気付かないような弱弱しい呼吸は、今にも止まってしまいそうなほどで。

もはや一刻の猶予もないと察した茜は、即座に詠唱の準備に入る。


「――我が汝に捧げるは豊穣の祈り。我が汝に求めるは優しき調。大地に恵みをもたらす者よ。我が願いに応え、その姿を今ここに――」


茜の手元から現れたフェアリーが、香里の体の上で軽やかに舞う。

妖精の舞……薄闇の中でなお、否、薄暗いからこそ、それは華麗に映る。

煌く衣が宙に光を広げ、歌うような詞が場に染み入り、癒しの調が香里に浸透してゆく。

次第に穏やかになってゆく香里の呼吸。

消えてゆく首の傷痕。

時間はかかっているけれど、少しずつ彼女の表情にも生気が戻ってくる。





「ぅ……」

「あ、気がついた?」

「大丈夫ですか?」


ほどなくして、香里が目を覚ます。

それを見て、微笑みながら、静かに声をかける茜と詩子。


「え……? あ、あなた達、どうして? それに、ゴーストは?」


意識を取り戻した香里が、バッと身を起こす。

突然の展開に、思考がついていけないらしい。

混乱気味の声。

表情にもまた、混乱の色が強い。


「あなた達を探してここまで辿り着いたの。ゴーストはもうやっつけたよ」

「はい。ですから、もう大丈夫ですよ」


安心させるために、茜と詩子は微笑みを絶やさない。

落ち着いた表情、落ち着いた言葉。

そんな意図が伝わったのか、香里もまた、やがて落ち着きを取り戻す。

ゴーストはもういない……そして、自分は生きている。

それが理解できた。


「……ありがとう、助けてくれて」


だから、微笑みながら、そんな飾り気も何もない純粋な感謝の言葉を口にした。

言葉よりも、表情で……笑顔で、感謝の意を伝えようと思って。


「うん」

「はい」


それが伝わったのだろう……2人の笑顔も穏やかなものだった。

3人が笑顔を交わし合うのは、けれどそこまで。

すぐにそれは真剣な表情に変わる。


「次は……」

「……祐一……」


2人は、祐一の方へと向き直る。

心配の色を、声に滲ませながら。

香里も、祐一が重傷を負っていることに思い至り、心配そうな表情で、そちらに目を向ける。





祐一は……先程の体勢のまま。

剣を支えに、何とか膝立ちの状態を保ったまま。

詩子が現れてからは、顔を下げ、俯いたまま。

けれど。


「……」


剣を持つ手が、微かに震えている。

煌く雫が、大地へと吸い込まれている。



激痛は、変わらず祐一を蝕んでいるだろう。

体力の著しい低下が、祐一を死へと少しずつ近づけていることだろう。



けれど、それでも。

祐一の震えは。

落ちる雫は。



痛みに因るものなんかでは、なくて。

苦しみに因るものなんかでも、なくて。

そしてもちろん、恐怖に因るものでも、なくて。



それは、きっと……










「祐一……」


言葉をかけられない詩子。

言葉を失う香里。

そして。


「――我が汝に捧げるは豊穣の祈り。我が汝に求めるは優しき調。大地に恵みをもたらす者よ。我が願いに応え、その姿を今ここに――」


無表情のまま、茜が詠唱を完成させる。

まずは、体の傷を癒す……全てはそれから。

現れたフェアリーが、祐一の体を癒していく。

震えが、少し強くなった気がした……










「……祐一」


茜が、静かに俯いたままの祐一に歩み寄っていく。

詩子と香里は、その場を動かない。

まずは茜に任せるということだろう。


「……った」


祐一のかすれた声。

小さいけれど、でも場に染み入るように響く声。

思わず立ち止まる茜。


「何も、できなかった……」


繰り返される言葉。

感情を押し殺したような、けれどそれが逆に、何よりも強く心情を表しているような、そんな言葉。


「俺は、何も……」


俯いたまま。

低い声音で。


「俺は……無力、なんだ……」


茜が再び歩き始める。

そして。


「祐一」


名を呼ぶ。

静かに、静かに。


「俺、は……」


震える肩、震える声。

もう傷は完治しているのに、それでもなお、剣を支えにして立っている。


「祐一……あなたは、無力なんかじゃないです」

「俺はっ!」


茜の言葉を聞いた瞬間に、バッと顔を上げた祐一。

叫ぶような声。

同時に、目元から雫が宙へと舞う……きらきらと、静かに。

祐一の言葉は止まらない。


「俺は、何もできなかったんだっ! あのゴーストに、まるで歯が立たなくて、何もできなくて……もう少しで、香里を……っ!」


血を吐くような、涙混じりの悲痛な叫び。

感情をそのまま言葉にしたような、そんな叫び。

敗北感と、無念と……悔しさを滲ませた、叫び。


「……そんなことはないわ。あれはどうしようもなかったもの……あなたが責任を感じる必要なんてないのよ」

「違うっ! 俺は、何とかできたはずだ! 魔力があるのに……魔力を持ってるはずなのに……それなのにっ!」


諭すような香里の言葉に、しかし強く頭を振って、否定の言葉を紡ぐ祐一。

魔力があるのに……キラーエイプに襲われた時には使えたのに、それなのに……



もし、ちゃんと魔力を使えていれば、香里が死の淵に追いやられることなんてなかった。

あんな危険な目にあわせずに済んだ。

仲間を、ちゃんと守れていた……



肝心な時に使えなくて、何が力だと言うのか。

肝心な時に何もできなくて、何が仲間だと言うのか。



どうしようもなかったじゃ済まされない。

どうにかできる力を持っていながら、それを使えなかったのだから。

ただ、いいように遊ばれていただけ。

なんて未熟なんだろう……なんて情けないんだろう……



そんな思いが、祐一を苛む。

沸き起こる悔しさが、雫となって、頬を流れる。


「俺は……どうして……こんなに……」


それ以上言葉にならない。

言葉にできない。

響くのは、かすれた涙声。

再び俯く祐一。

無力感が。

悔しさが。

後から後から湧き出てきて、そしてそれがまた雫となり、地に落ちる。










「……」


無言のまま、静かに祐一に歩み寄る茜。

その表情からは、感情なんて一切読み取ることはできない。

そして、祐一のそばまでくると、ゆっくりと両手で祐一の頬を包み込み、その顔を上げさせる。

交わる視線と視線。

無言の両者……それも長くは続かない。


「あなたは、どうしてそうなんですか?」


静かに、ゆっくりと、そしてどこか悲しそうに、茜が言葉を紡ぐ。

2人の感情が、静かに揺れる。



憂いを帯びた視線は、静かに祐一の心に染み入り。

悔しさを湛えた視線は、静かに茜の心に染み入り。



哀しげなその表情を見て、何も言えなくなる祐一。

それを見て、ゆっくりと口を開く茜。


「どうして、何でもかんでも自分で背負おうとするんですか?」

「俺、は……」

「どうして、もっと自分に優しくできないんですか?」

「……」


どちらが泣いているのかわからない、そんなシーン。

静かな光景、静かな言葉。


「あなたは、無力なんかじゃありません」

「違う……魔力さえ、使えていたら……」

「それが間違いなんです!」


そこで語調を強める茜。

両手にも力がこもる。

2人の距離がさらに縮まる。

強い意志の宿った目を間近に見て、思わず言葉を止める祐一。


「魔力なんか、どうでもいいじゃないですか! 魔力なんてなくったって、祐一は祐一です! 魔力のあるなしで、祐一の何が変わるっていうんですか?!」


強い声音……でも、どこか悲しげな響きをそれは持っていて。

祐一の体がびくりと震える。

その目は、ただ悲しそうな茜の目を見つめたまま。

2人の瞳が静かに揺れる。

瞳の中のお互いが、静かに静かに揺れている。


「……そうだよ。魔力なんかにこだわらないでよ。そんな風に祐一が自分を責めるくらいなら、魔力なんていらないよ」


詩子が、茜の言葉に続く。

見れば、詩子と香里も、ゆっくりと2人に歩み寄ってきていた。

ゆっくりとそちらに向けられる祐一の視線。

静かに言葉を続ける詩子。


「祐一は、自分にできる精一杯をやったんだよ? いつも、精一杯やってるんだよ? それでいいじゃない。どうして、それ以上を求めようとするの?」

「……そうよ、相沢君。あなたはあの時、痛みに耐えて、立ち上がってくれたじゃない。それがなかったら……あたしは助からなかったわ」





香里が殺されかけていたあの時、祐一が痛みに耐えながら立ち上がり、ゴーストに向かって吼えたこと。

もし、これがなかったら、間違いなく茜と詩子は間に合わなかっただろう。

祐一が足掻いたからこそ、ゴーストの意識を引き付けたからこそ、時間を稼いだからこそ、香里は今、生きている。

だから。





「あなたは、何もできなかったんじゃない。自分にできる限りのことをやった……これは、あたしが保証するわ」


微笑みながら、諭すように、感謝を示すように、香里は祐一に言葉をかける。

いつの間にか茜の手を離れていた祐一が、そんな香里に揺れる瞳を向けた。


「俺は……」


揺れる瞳、揺れる心、揺れる言葉。


「魔力なんて、求めないで。力なんて、求めないで。そんな祐一、イヤだよ。祐一は、祐一のままでいてくれないと」


詩子が、優しく微笑みながら、ゆっくりと言葉を紡ぎ出す。

祐一の耳に染み入る、それはそんな言葉。


「魔力なんていりません。魔力が必要な時は、私達がいます。私達が、支えてあげます。祐一がいつも、私達を支えてくれているように」


茜もまた、微笑みを浮かべる。

その微笑は、まるで祐一を優しく包み込むかのようで。


「俺が……2人を……?」


祐一の言葉。

まだ揺れている、言葉。


「そうですよ。いつも、いつも……私達が、どれだけあなたに助けられていると思ってるんですか?」

「……私達が必要としてるのは、祐一の魔力なんかじゃないよ。祐一を、必要としてるんだよ」

「ほら……これだけ想われてて、まだ自分を責めるの?」


3人の言葉は、どこまでも優しくて。

限りなく優しくて。

それは確かに、心に暖かく染み入って。


「俺……」


魔力にばかり目がいっていて。

強さにばかり目がいっていて。

でも、違った……そうじゃ、なかった……必要なのは、大切なのは、そんなものじゃなかった……


「いつも精一杯がんばってる祐一が、私達は好きなんだよ」

「はい……」


優しい微笑みとともに紡がれた言葉は、どこまでも温かさに満ちていて。

祐一の心に、強く響いて。


「……ありがとう……」


祐一は、さっきまでとは違った意味で、再び俯いて。

さっきまでとは違った意味の、雫が溢れ。

ささやかな、小さな感謝の言葉だけを、どうにか形にして。

けれど無限の感謝の意思を、そこにこめて。

それ以上何も言えないままで。

ただ、温かさに……優しさに……そして、幸せに、浸っていた。


















後書き



またまたシリアス……やれやれだぜ(笑)

ども、GaNです、ごきげんよう。



この対ゴースト戦のポイントは、やっぱり祐一くんの悔し涙でしょう、うん。

涙の数だけ強くなれるってなフレーズがありますが、まぁそんな感じで。

徹底的に叩きのめされてって感じの敗北を味わうのもアリかな、と。

あと、祐一くんの意識改革の意味もこめて。

力を求めるのはいいとしても、それを義務みたいに考える必要はないわけで。

できないことまでしようと考えるのは、ただの思い上がりなんだ、と。

自分の力が及ばなくても、助けてくれる仲間がいるんだ、と。

その辺を理解してもらおうってところですね。



にしても、いいかげん、のんびりお気楽風味に戻りたいところです。

次回くらいからは、まぁ、いつもの芸風(?)に戻る予定ですので。

っていうか、そうじゃないと看板に偽りありってことになっちゃうしなぁ(笑)



しかし長いな、森林編。

そろそろ終わりが見えてきてほしいもんですが。

まぁ、終了に向けて頑張っていきますか。

それでは今回はこの辺で。





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