12/1 雪見祭り










1、『宴会料理。沈黙して食す』


 みさき「雪ちゃんってさ、お魚が苦手なんだよね?」
 雪見 「魚ってわけじゃないけど、苦手よ」
 みさき「じゃあ、これも?」
 雪見 「残念だけど、嫌い。食べていいわよ」
 みさき「損してるね、雪ちゃん」

 幸せそうにカニを頬張るみさき。






2、『宴会料理。スタミナ向上』


 みさき「雪ちゃんってさ、お魚が苦手なんだよね?」
 雪見 「重ね重ね言うけど、苦手よ」
 みさき「じゃあ、これも?」
 雪見 「みさき。それは立派な魚よ」
 みさき「私が食べていいの?」
 雪見 「うなぎは油とか味的にも嫌いなのよ」






3、『宴会料理。高級編』


 みさき「雪ちゃん」
 雪見 「なにかしら?」
 みさき「お魚とかがダメってことは、コレもダメなの?」
 雪見 「そうね、無理」
 みさき「本当に損してるね、雪ちゃんは」

 ホタテ、アワビ等の海産物を前に。






4、『宴会料理――ではありません』


 みさき「雪ちゃん」
 雪見 「なに?」
 みさき「お魚とかが――」
 雪見 「だからといってビーフカレーは関係ないわよ、みさき」
 みさき「……いじわる」






5、『宴会料理。気心を貴方に、試練を我が子に』


 みさき「雪ちゃん。今日は楽しめた?」
 雪見 「ええ。ちょっと苦手なものばっかりだたけど、概ね」
 みさき「良かったよ。料理とかは全部私が考えたんだよ」
 雪見 「……え?」
 みさき「雪ちゃんが満足なら、他の人たちも満足してくれたよね。うんっ」
 雪見 「みさき……あんた、わざと……?」
 みさき「ちょ、チョビ髭は私じゃないよ?」






6、『部員3人。部費は0』


 浩平「あれ? 部長は?」
 澪 『客引きに行ったの』
 浩平「はぁ?」

 正しくは部員の勧誘である。






7、『深山雪見の勧誘日記1日目 ―幽霊部員―』


 雪見 「まず一人、と」
 みさき「ん? 雪ちゃん、何か言った?」
 雪見 「何でもないわよ。あ、親指に朱肉が付いてるから気をつけてね」
 みさき「よくわからないけどわかったよ〜」






8、『深山雪見の勧誘日記2日目 ―対抗馬―』


 雪見「演劇に興味はないかしら?」
 名雪「わたし陸上部の部長さん……」
 雪見「練習後にはおやつも出るのよ。たとえばイチゴとか……」
 名雪「ここに名前書けばいいんですよね♪」






9、『深山雪見の勧誘日記3日目 ―中学生―』


 雪見「テリヤキバーガーもあるわよ」
 繭 「みゅー♪」

 後日、深山雪見は現実を知る。






10、『深山雪見の勧誘日記4日目 ―他校の生徒―』


 雪見「一日三食昼寝付き!」
 詩子「もう一声!」
 雪見「おやつは毎日10時と3時!」
 詩子「のったぁ!」
 雪見「それじゃ、この用紙にクラスと名前を書いてもらえるかしら。出来たら印鑑も」
 詩子「はいはーい♪」
 雪見「そうそう、一つだけ確認したいことがあるの」
 詩子「はい?」
 雪見「あなた、この学校の生徒よね?」

 いつぞやの教訓を元に。






11、『深山雪見の勧誘日記5日目 ―この期に及んで選り好み―』


 雪見「やっぱり同じ部活内に似たキャラがいるっていうのは困るわよね」
 香里「は?」
 雪見「何でもないわ。こっちの話」

 出しかけた入部届けを引っ込めながら。






12、『深山雪見の勧誘日記6日目 ―問題児―』


 雪見「集団生活に溶け込めない娘もちょっとね……」
 観鈴「が、がお……ひどい……」






13、『深山雪見の勧誘日記7日目 ―休校日―』


 雪見「休日にまで学校へ来てる私も私だけど休日の学校でアイスを食べる生徒がいるなんて……」
 栞 「そんなに変ですか?」
 雪見「変ではないけど、普通でもないと思うわ」
 栞 「そんなこと言わずに、お一つどうです?」
 雪見「……せっかくだし頂こうかしら」
 栞 「はい、じゃあ、これを」

 コンビニのビニール袋から取り出されたのは雪見大福だったとか何とか。






14、『深山雪見の勧誘日記8日目 ―風邪―』


 浩平「あれ? 部長は?」
 澪 『冬場のアイスは無謀なの』
 浩平「はぁ?」

 素人にはオススメできない。






15、『放課後』


 みさき「雪ちゃーん、この荷物はどっちー?」
 雪見 「それは動かさなくていいの。持って行ってもらいたいのはこっち」
 澪  『買出し行ってきますなの〜♪』
 名雪 「イチゴ! イチゴ買ってきてねっ!」
 栞  「アイスもお願いします!」
 観鈴 「私、ゲルルンジュースが欲しいなっ」
 繭  「みゅ。てりやきバーガー」
 詩子 「私はザッハトルテー♪」

 香里 「……ここはいつから幼稚園になったのかしら」
 浩平 「その前にこの異常な男女比をどうにかしてくれ」






16、『家事のさしすせそ』


 雪見「ボタンが取れた? あぁ、それくらいなら私が縫っておくわ」
 雪見「みさきっ! つまみ食いするなって言ったでしょ!」
 雪見「夕飯は何がいい? リクエストにはお応えするわよ」
 雪見「ついでだからそのシャツも脱ぎなさい。一緒に洗っちゃうから」
 雪見「またこんなに散らかして……。ほうきとちりとり、それに雑巾も必要ね……」

 浩平「深山さん、結婚してくれませんか?」
 雪見「え?」






17、『三つ巴』


 みさき「だめだよー。雪ちゃんは私の奥さんなんだから」
 澪  『それも違うの。わたしのお母さんなの』
 浩平 「じゃ、俺は深山さんの愛人ってことで」

 雪見「美坂さん、メリケンサック貸してちょうだい。それから川澄さん、その刀も」






18、『それぞれの卒業式』


 佐祐理「祐一さん、手を繋ぎませんか?」
 祐一 「こ、ここでですか!?」
 舞  「…………私も」
 祐一 「ま、舞まで……」

 浩平 「先輩、先輩。ここは恋人らしく腕を組むべきだと思うんだが」
 みさき「……うん。そういうのも良いかもね♪」

 女生徒「…………(おろおろ」
 雪見 「…………(わなわな」
 女生徒「…………(びくびく」
 雪見 「…………(ひくひく」
 女生徒「ぶ、ぶぶぶぶぶ部長! 元気だしてくださいっ!」
 雪見 「どうせ私は一人身よ! 演劇部に青春費やした売れ残りよー!」
 女生徒「ぶちょ! おちつ……きゃあ!」






19、『舞台裏』


 雪見 「あなたさえ! あなたさえいなければっ!」
 なつき「え、え、え!?」
 女生徒「まだやってる……」






20、『演劇部部長』


 雪見 「ほらっ、起きなさいよーっ」
 雪見 「窓辺にたたずんでコーヒーを飲む。乙女にしかなせない技よね」
 雪見 「嫌です」
 雪見 『あのね』
 雪見 「みゅー」
 雪見 「途中から手抜きになってると思うよ」

 雪見 「これだけやってもまだメインにはなれないの!?」
 女生徒「っていうかそれは演技じゃなくてただの物真似じゃ、あ、ごめんなさいごめんなさい」






21、『往き(と)倒れ』
 雪見「ふぅ、久しぶりにツーリング。いいわね」
 雪見「風景も綺麗だし。風も気持ちいいし。みさきと一緒に来れたらもっと良かったんだけど」
 雪見「……そんなこと言ってられないか。湖も綺麗。空気も美味しいわ。それに行き倒れの男性も情緒を……って、大丈夫ですか!」
 往人「は……」
 雪見「は?」
 往人「腹減った……ラーメンセット……」






22、『旅は道連れ。往き(と)放題』


 往人「(ガツガツガツガツガツ)」
 雪見「そ、そんなに慌てて食べたら……」
 往人「(ガツガツガツガツガツ)」
 雪見「喉に……」
 往人「(ガツガツガツガツガツ」
 雪見「詰まらないんですね……」
 往人「おかわり」
 雪見「まだ食べるんですか!」
 往人「まだ三杯しか食ってないぞ」
 雪見「……普通はそれで――」
 往人「というわけでおかわり」
 雪見「人の話を聞いて下さい!」






23、『旅費無し。往き(と)先無し』


 往人「ふぅ、食った食った。さんきゅー」
 雪見「値段。払ってもらいますからね」
 往人「さて、俺は旅の続きを――」
 雪見「払ってください」
 往人「……人形劇でいいか?」






24、『形無し。往き(と)先有り』


 雪見「というわけで、新入部員の発表があります。国崎往人さんで、手品のような人形劇ができます」
 往人「……よろしく」






25、『キラーパス』


 みさき「うん、今日のカツカレーはいつもより美味しいよ」
 浩平 「……いや、だからってそんなに食べるのはちょっと……あ、深山さん」
 雪見 「あら、二人ともこんにちは。……って、みさきはまたそんなに食べて」
 みさき「今日はカレーがお勧めだよ。雪ちゃんもカレーにする?」
 雪見 「なるほど。だからいつもよりいっぱい食べてるのね」
 みさき「うん!」
 雪見 「……そしてまた月末には私からの借金が二千円増える、と」
 みさき「ん!? ん! ん〜〜〜〜っ!!」
 浩平 「わわっ! ほら先輩、水!」






26、『観音様はお見通しであらせられましたとさ』


 雪見 「まったくもう、驚かせないでよ。カレーを喉に詰まらせる人、初めて見たわ」
 浩平 「俺も初めて見た……」
 みさき「うー、雪ちゃんがあんなこと言うからだよ」
 雪見 「少しは自重しなさいよ。最近は折原君にも借りてるっていうのに」
 みさき「ちょ、ちょっと! なんで雪ちゃんが知ってるの!?」
 浩平 「お、俺は一言も言ってないぞ!」
 雪見 「最近貸すお金が減ってるもの。一番考えやすいのはそれでしょ?」
 みさき「うう〜」
 浩平 「あ、あはははは……さすが親友」






27、『藪を突付けばなぜかサイドワインダー』

 雪見 「みさきにもいい人ができて少しは落ち着くと思ったんだけどなぁ」
 浩平 「……古っ」
 みさき「そうだよ雪ちゃん。もっとナウい表現を使おうよ」
 浩平 「いや、それも古いから……」
 雪見 「そういうどうでもいいことは置いといて。にしても、動揺一つしないんじゃからかいようもないわね」
 みさき「ふっふっふ。いつまでもやられてばかりじゃないよ」
 雪見 「ふふふふふ。その余裕、いつまでもつのかしらね?」
 みさき「形勢はすでに逆転してるんだけどね。そのネタを持ち出したのが運の尽きだよ」
 雪見 「それはどういう……」
 みさき「浩平君。雪ちゃんの初恋の話、聞きたくない?」
 浩平 「へ?」
 雪見 「みさきーーーーーーーーっ!!」






28、『淡い思い出はそれはもう深く深く心に刻まれる』


 みさき「小学校の頃で相手はクラスの男の子だったんだけどね」
 浩平 「ほうほう」
 雪見 「こら、みさき! やめなさい!」
 みさき「思い切って好きだって言ったらしいんだけど、おしとやかな子が好みらしくて断られちゃって」
 浩平 「……へ? それでどうして断られるんだ?」
 雪見 「やめろやめろやめろストップだってば!」
 みさき「雪ちゃん、昔は机に足をかけて『一、ニ、三、ダーッ!』とか叫んでたから」
 雪見 「うがーーーーーっ!」
 浩平 「うお、深山さんが壊れた!?」
 みさき「それからだよね、雪ちゃんが今みたいになったのは。……あれ、どうしたの?」
 雪見 「…………」
 浩平 「あー、まあ、あれだな。古傷にクリティカルヒットってやつ」






29、『追撃は迅速に、且つ容赦無く』


 雪見 「あああああ……うううう……」
 みさき「久しぶりに逆転勝利だよ」
 浩平 「哀れ……」
 みさき「あ、そうそう。中学時代の逸話も今度話してあげるね」
 雪見 「……ガクッ」
 浩平 「うぁ、とどめ……」






30、『善意は時として傷口に塩を塗る』


 留美「この人は?」
 浩平「深山雪見先輩だ。乙女を目指すお前の力になってくれるはずだ」
 雪見「……折原君。禁忌って知ってる?」






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