コウヤの事件から数ヶ月、大津名市は平和になった。

この事件を解決した火者達も普段は一介の学生である。

今回もそんな彼らの日常を少し覗いて見ることにしよう。








































ここは桜水台学園の天文部の部室。

今日もまた


「羽村、たのみがあるんだが」


こんなやり取りが行われていた。








































ある天文部の一週間

第四話「マコトのハラハラ木曜日」








































「どうしたんだ、マコト」

「お前に頼みがあるんだが」

「どんな事だ?」

「いや…その……」

「ん?」


言いにくそうにしている私を見て、羽村は首をかしげた。





羽村亮…

初めて会ったときは軟弱者という印象だった。

『能力』を持っているだけの者。

覚悟の足りない者。

どれも良い印象ではなかった。

しかし、それが間違いである事に気づかされた。

羽村は私が持っていないものをたくさん持っていた。

また、私の弱さを受け入れてくれた…

キララの事で迷っていた時も、答えを導いてくれた…





そんな強さと優しさを持つ羽村に私は惚れている。

私の手は血に染まっている。

そんな私が幸せを求めるのは間違いかもしれない。

それでも……

叶うなら、キララと羽村と三人で共に生きていきたい。

しかし、それは難しい事だろう。

羽村の良さが分かるものが他にもいるのだから…

嬢や鏡花、真言美である。

彼女達は大切な仲間だが、これだけは譲れない。


「どうしたんだ、マコト」

「い、いや。なんでもない」

「で、頼みって何だ?」


羽村が再び聞いてきた。


「……ハンバーグを作れるか?」


私は恥ずかしかったが用件を言った。


「ハンバーグか?作れない事は無いけど」

「作り方を教えてくれないか」

「かまわないがどうしてだ?」


羽村は不思議そうに聞いてきた。


「キララの好物なんだ。一度作ってやりたくて」

「そういうことか…分かった。俺でよければ教えるぜ」

「恩に着る」


羽村は快く引き受けてくれた。

料理なら嬢のほうが上手なのだが、私の家から距離があるので中々頼みにくい。

その上……味付けが独特なので、私はともかくキララには少し口に合わないだろう。

鏡花は料理があまり得意そうではないし、真言美はできるだろうが、あまり遅いと迷惑をかけてしまう。

百瀬は…多分できそうだが、彼女との仲を邪魔するようで気が引ける。

そうすると、味付けが普通で家も隣の羽村に頼むことになってしまう。

また、羽村と少しでも一緒にいたいという気持ちもある。

むしろそっちのほうが大きい。


「で、どうする?」


羽村が私に尋ねてきた。


「何の事だ?」

「材料だよ。マコトの家に材料はあるのか?」

「いや。なにが必要なのかも分からない」

「そうか…それなら買っていこうか?」

「そこまで迷惑をかける訳にはいかない。必要なものを教えてくれれば私が買いに行く」

「迷惑じゃないんだけどな…分かった。それじゃあメモを渡しておくぞ」

「助かる」


そう言って羽村は苦笑しながらメモを書き始めた。


(迷惑じゃない……か)


そんな事を思いながら私はメモを書いている羽村を見ていた。





それから少しして……


「できた。このメモ通りに買ってくれればいいから」

「分かった」

「それでいつ行けばいいんだ?」

「そうだな、今日帰ってから来てもらってもいいか?多分キララがいるから、開けてもらってくれ」

「分かったよ」

「それじゃあ、訓練に行こうか?」

「お手柔らかに頼むぞ、マコト」

「善処しよう」


そういいながら私達は訓練をするために部室を後にした。








































「ただいま」

「お帰り、おねえちゃん」

「マコト、邪魔してるぞ」


私が材料を買ってアパートに戻るとキララと羽村が出迎えてくれた。


「おねえちゃん、今日ハンバーグってのはほんまか?」

「ああ、羽村に習って作ってみようと思ってな」

「うわぁ、めっちゃうれしいわ」

「そうか…これから作るから待っててくれ」

「分かった。楽しみにまっとるわ」


そう言ってキララは部屋へと戻っていった。


「それでは羽村、作り方を教えてくれ」

「分かったよ」


そして私達は調理を開始した。





ハンバーグは思ったよりもうまくいきそうだった。

羽村の指導の下、大きな失敗も無く進んだ。

今は人数分のハンバーグを焼いているところだ。

作業が意外と単純だという点もあるが、羽村の教え方の上手さが大きい。

私は結局、羽村に色々と世話になっている。

しかし私には羽村に何かしてやることは出来ない。

あえて出来るとしたら訓練に付き合う事くらいだ。

それももうそろそろ立場が逆になってしまうだろう。

それくらいに羽村の成長は素晴らしい。

その事を嬉しく思う反面、悲しくもある。

そうなったら私は羽村の役に立つことが出来なくなってしまうのだから…


「マコトどうした、そんな浮かない顔をして」


突然横から羽村が話し掛けてきた。


「いや……何でも」


何でもないと言おうとしたら羽村に、


「嘘だな」


と先手を打たれてしまった。


「何か悩んでただろう」

「……ああ」


私は正直に答えた。

普段は鈍感そうな羽村だが、こういう時は意外に鋭かったりする。


(全く……かなわないな)


こんな事を思いながら私は思っていた事を全て話した。

それを聞いた羽村は、


「はぁ、そんな事気にしなくてもいいのに」


とため息をつきながら言った。

それを聞いた私は。


「そんな事とは何だ。私にとっては大事な事なのだ」


と強く言ってしまった。

そしてその直後に後悔した。

羽村としたら気にする必要がないというつもりでいったのだろう。

しかし私はそれに対して強く反発してしまった。


(しまった…………)


そんな事を思っていると羽村は苦笑しながら、


「だったらいつか返してくれたらいいぞ」


と言ってくれた。

全く人がいいというか何と言うか……

しかし全く嫌な感じがしない。

むしろ心地よい感じがする。


「分かった。いつか返す」


私は自然と笑顔になって返事をした。


「お、おお。期待してるぞ」


それを見た羽村は何か焦った様に返事をした。


(一体なにを焦っているのだろう)


そんな事を考えながら目の前のフライパンに集中した。





しかし、ふと考えてみると……

この状況……








































新婚夫婦の様子に見えなくも無い







































料理を作る妻にそれを見守る夫。


(これは………私が望んでいた事ではないか)


そんな事を考えてしまい、私は顔が真っ赤になりそうだった。

その事を羽村に悟られないように精神を集中していた。

私はそんな事をしながらもちょっとした幸せを感じていた。

しかしそれを邪魔するかのように、目の前に黒い物体が現れた。

それは何億年も前から存在していると言われていたり、一匹いたら三十匹はいると言われていたりする……








































そう








































ゴキブリである。








































私はそれを見た瞬間、何のためらいも無く雷穿甲を装着した。

全ては目の前の敵を倒すため。

しかし相手も私の殺気を感じてか飛んで逃げようとする。

逃がすつもりは無い。

私は集中力を高めて、狙いをつけた。

そして奴を倒すために…





「マコト!!やめ……」





打ち抜いた。








































ドン!!








































その音と共に敵「ゴキブリ」を倒した。


「おねえちゃん、どないしたん?おっきな音がしたで」


キララが台所にやってきた。


「いったい何が……!! にいちゃん、しっかりしいや!!」


キララはいきなり叫びだし何かを抱きかかえた。


「どうしたんだ、キララ」


私はキララに尋ねた。


「おねえちゃん、どうもこうも…にいちゃんが……」


そう言われてキララが抱きかかえているものを見ると……








































目を回して気絶している羽村だった








































どうやらゴキブリと一緒に巻き込んでしまったようだ。

その後、目を覚ました羽村に何度も謝った。

また、そんな事をしている内にハンバーグも焦がしてしまいキララに怒られてしまった。

そしてそれ以降暫くの間、羽村は私のアパートの台所には立ち入らなくなった。

すまん、羽村、キララ。この埋め合わせは必ずする……










































あとがき

「ある天文部の一週間」第四話を読んでいただきありがとうございます。

こんかいのヒロインは祁答院マコトです。

ゲーム中では色々と苦しんできたマコトですが、こんな日常もあったらいいなと思って書いてみました。

……

ダメですか?






コホン、えーと……今度は金曜日ですが…もっと上手く書けるよう努力しますので、見捨てないでくれると嬉しいです。

それでは、最後に掲載してくださったK9999さん、そして読者の皆さん本当にありがとうございます。

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