コウヤの事件から数ヶ月、大津名市は平和になった。

この事件を解決した火者達も普段は一介の学生である。

今回もそんな彼らの日常を少し覗いて見ることにしよう。




























































ここは桜水台学園の天文部の部室。

今日もまた


「先輩、ちょっといいですか?」


こんなやり取りが行われていた。





























































ある天文部の一週間

第三話「真言美のルンルン水曜日」





























































部活動を終えて部室に戻ると、そこには先輩がいました。



羽村先輩……

私を天文部に勧誘してくれた人…

初めての光狩との戦闘で逃げ出してしまった私を励ましてくれた人…

燃えさかるデパートから私を助け出そうとしてくれた人…

そして……私が一番大好きな人…



先輩に対する初めの気持ちは憧れでした。

人知れず戦う正義の味方、そんな先輩達に憧れて天文部に入りました。

でも、現実は甘くありませんでした。

初めて見た光狩はとてもおぞましく、私は逃げ出しました。

敵を前にして逃げ出すなんて……正義の味方失格です。

それ以来、台本を読んでも役に入り込めなくなりました。

そんな時に励ましてくれたのも先輩でした。

そして……自信を取り戻したくて、単身光狩のいるデパートに行きました。

そこで出会った先輩に助けられながら、何とか光狩を倒す事ができました。

それ以来、私は天文部の一員として光狩と戦う事になりました。

天文部に入ってから色々ありました。

天体観測や文化祭での星空カフェのような、本当の部活動といえる事から、光狩に誘拐されたり真夜を止めるために戦ったりと、普通の生 活では決して経験しない事まで…

これも全部、天文部の人たちや先輩のおかげです。

また先輩と一緒にいるうちに、憧れは思慕に変わりました。

でも、先輩に好意を持っているのは私だけではありません。

同じ天文部のいずみさんや鏡花さん、マコトさんがそうです。

いずみさん達にも色々お世話になっていますが、これとそれとは話は別です。

先輩に関しては一歩も譲る気はありません。

最後に決めるのは先輩ですが、できれば私を選んで欲しいです…


「……ちゃん、真言美ちゃん」

「……あ、はい」

「どうかしたのかい、真言美ちゃん。急にだまって……」

「何でもありません、先輩」


いつの間にか考えふけっていたようです。

先輩が呼んでいることに気がつきませんでした。


「そうかい、それなら良いけど」

「そうそう先輩、これからお時間ありますか?」


私は話をそらせる意味も込めて、先輩に用件をいいました。


「部活も終わったし…これから帰るところだけど」

「もしよろしかったら、また台本を読む練習に付き合ってもらえませんか?」

「台本を読む練習って?」

「はい、最近、養成学校以外でそういった事をしなくなったので…久しぶりにやろうかと思いまして」

「でも、俺は棒読みだよ」

「それでもかまいません。どうしても相手が欲しかったので」

「俺で良いならかまわないけど」

「ありがとうございます、先輩」

「それで…どこで練習するつもりだい?」

「前と同じ、学校裏でいいですか」

「かまわないよ」

「それじゃあ、さっそく行きましょう」


こうして先輩と私は部室から学校裏へと向かいました……




























































「…………」

「…………」


今、先輩と私は学校裏で台本を読む練習をしています。

ここで台本を読む事は久しぶりです。

数ヶ月前までは毎日やっていた事なのですが……

俳優養成学校に通うようになってからは、全くといって良いほどしなくなってしまいました。

自分の夢の為に通い始めた養成学校ですが、私の能力にも効果があったようです。

私の能力は『言霊』といって、簡単に言えば魔法みたいなものです。

この『言霊』、本当は凍夜の時にしか使えないのですが力が上がったおかげで、簡単なものなら普段でも使えるようになりました。

そうはいっても滅多な事では使わない事に決めています。

過ぎた力というものは、相手にも自分にも不幸しか呼びませんから。


「話があるんだ…」

「何ですか、先輩」

「大事な話なんだ」

「どうしたんですか、急に」


普段とあまり変わらない会話をしているようですが、これは台本の台詞を読んでいるのです。

実は、私が先輩に渡した台本は………





























































学園恋愛ものの台本




























































なのです。

ちなみに今練習しているのは、先輩の男の子が後輩の女の子に告白するシーンです。

告白のシーンの練習は一人ではやりたくありません。

やっていて虚しくなりますから……

そこで、先輩に練習相手を頼んだという訳です。



……という事が表向きの理由です。

本当の理由は先輩に告白されてみたかったからです。

先輩が誰に告白するかは全く分かりません。

私を選んでくれるかもしれませんし、他の人を選ぶかもしれません。

でも、演技でも良いから先輩に告白されたい…

そんな気持ちがあったので先輩に頼みました……


「しっかり聞いて欲しい、実は…」

「実は…」

「君の事が…」

「……」

「……」

「……」

「……真言美ちゃん、本当に読まないと駄目なのかい?」

「先輩!! 練習に付き合ってくれるって言ってくれたのは先輩じゃないですか!!」

「そうだけど……」

「だったらちゃんと読んでください」

「でも……」

「先輩、駄目なんですか……」


私は渋る先輩を上目遣い(涙目付き)で見ました。


(男の人はこれに弱いですから……)


と思っていると、予想通りに


「……分かったよ」


先輩は降参しました。


(これを教えてくれた鏡花さんには感謝しないといけませんね……)


と考えながら先輩が再び台本を読むのを待ちました。


「実は……」

「実は……」

「君の事が……」

「……」


私は期待しながら次の先輩の台詞を待ちました。

そして…




























































「す、好きなんだ…」




























































その台詞を聞いた私は頭が真っ白になって……




























































「先輩、うれしいです…………
ファイアー!!




























































嬉しさのあまり『言霊』を使ってしまいました……




























































その直後、正気にかえり先輩を見ましたが、そこには……





























































ミディアムレアの羽村先輩が横になっていました……




























































その後すぐに介抱しましたので大事には至りませんでした。

そして、気が付いた先輩に何度も謝りました。

何でもその時、先輩はきれいなお花畑で知り合いになった鬼達と拳で友情を深めていたとか…

きれいなお花畑って…

それ以来、私が台本を持っているのを見かけると青い顔をしてガタガタ震えるようになってしまいました。

先輩〜ごめんなさい〜。






























































あとがき

こんにちは、怠け者SS作家のおもちです。

今回第三話の主役は三輪坂真言美です。

彼女はゲーム中でお世話になりました。

『言霊』って強いですからね〜

……そう考えるのは自分だけでしょうか……

今回も読んでくださいましてありがとうございます。

まだまだ至らない点も多々あると思いますが、少しでも楽しんでもらえれば幸いです。



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