コウヤの事件から数ヶ月、大津名市は平和になった。

この事件を解決した火者達も普段は一介の学生である。

今回もそんな彼らの日常を少し覗いて見ることにしよう。
























































ここは桜水台学園の天文部の部室。

今日は今日で


「亮、ちょっと付き合ってくれない?」


こんなやり取りが行われていた。
























































ある天文部の一週間

第二話「鏡花のワクワク火曜日」
























































「どうしたんだ、鏡花」


天文部部長である亮はそう答えた。

見た目はそれほどパッとしないが、強くて優しい人。

私が人の心を読める「サトリ」の能力を持っていると知っても、接し方を変えずにいてくれた人。

そして、私が大好きな人。

そんな彼の言葉を聞いて、私は


「仕事のお給料がはいったから買い物に付き合ってもらおうと思って」


と返事をした。


「…いきなりだな」


彼は面倒くさそうな顔をしてそんな風に返事をした。

普通なら断わるだろうと思える言葉である。

しかし、私には亮の思っている事が分かる。


『しょうがないな、付き合うか』


これが亮の心の中での考えである。

今日の提案は完全に私の思い付きである。

でも亮は嫌そうな顔はしてもちゃんと付き合ってくれる。

そんな所からも亮の優しさがわかる。

でも、そんな彼だから慕っている人は何人もいる。

いずみやマナちゃん、マコト達である。

彼女達も亮の良さを知り、彼に好意を寄せている。

しかし、亮本人はそのことに全く気づいていない。


(こういう事には鈍感なのよね…)


こんな事を考えていると、亮が


「いいぜ。ただし、部活が終わってからだけどな」

「いいわ、ありがとう亮」


と答えた。

分かってはいたが、その返事を聞いては笑顔になってしまう。

亮の提案にも賛成できる。

今でも真月の影響で「ルナシィ」が起きているのだ。

いざという時の為、鍛錬を怠る事はできない。


「それじゃあ、部活動といきますか」

「わかったわ」


こうして私達は部室を後にした。
























































「う〜ん、楽しかった」

「それは良かったな…」

「どうしたのよ亮、疲れた顔して」

「……実際疲れてるんだけどな」

「まあまあ、亮もこんなかわいい女の子と一緒にいて嬉しいでしょ?」

「……よく自分でそんな事言えるな」

「まあね」


部活を終えた私達は商店街でショッピングを楽しんだ。

楽しんだのは私だけという話もあるが……

それでも亮は付き合ってくれた。

服やアクセサリーを見ているときでも、亮は嫌な顔せず待っていてくれた。

やっぱり亮は優しい。

今日もあえて亮と行く必要はなかった。

でも、亮と一緒にいると心が落ち着く。

私の心を優しく包んでくれる感じがする。

だからどうしても亮に甘えてしまう。


「そんなことより早く映画館に行くわよ!!」


そんな事を考えているのが恥ずかしくなって、声を大きくして話した。


「そんなことって……」

「いいじゃない、付き合ってくれたお礼にお金は出してあげるから」

「それに、いきなりだな」

「気にしない気にしない」

「はぁ……」

「もう、行くの?行かないの?ハイかYESで答えて」

「……それって強制って言わないか」

「だめ?」


乗り気ではなさそうな亮に対して、上目使いで言った。


「…………しょうがないな」


葛藤があったような沈黙の後、亮は降参した。


「そうこなくっちゃ」


と返事をしたが、心の中では


(これは使えるわね、また今度も使おうかしら)


と思ったのは秘密である。

こんなやり取りをした後、私達は映画館に向かった。
























































「なんとか間に合いそうね」

「ところでひとつ聞いていいか」

「なに」

「今日はどんな映画を見るつもりだ?」

「ひ・み・つ♪」

「………すごく気になるんだが」

「まあまあ、ついてからのお楽しみということで」


そんな事を話しているうちに映画館に着いた。

最終上映時間には間に合ったようだ。


「鏡花さん、ひとつお尋ねしてもよろしいですか?」


亮が必要以上に丁寧な言葉遣いで聞いてきた。


「なに」

「もしかして今日ご覧になる映画は、これでしょうか?」


そう言って亮は映画館の入り口に貼ってあるポスターを指さした。

それは今話題になっているアクション映画のものだった。


「そうよ」

「……」


そう答えると亮は黙ってしまった。

その時、亮が考えていた事は


『嫌な予感がする………逃げよう』


という事だった。

それを知った私は


(失礼ね。それにそんな事はさせないわよ)


と先手を打つことにした。

亮が黙って考えている内にお金を二人分払い、気づかれないように亮の後ろに立った。

そして亮が


「鏡花、用事がぁ……」


と言おうとした所、首根っこを捕まえて引きずって映画館に入った。
























































映画館の中はあまり人がいなかった。

話題の映画とはいえ、流石に最終上映時間だとこんなものだろう。

それに人が少ない事は悪い事ではない。

それどころか利点ですらある。

たとえば…
























































真っ暗な中イチャイチャすることができる
























































といった事である。

暗くなってから私から亮に何か(?)するのも面白そうだ。

亮からしてくれる方が理想的なのだが…


(亮からそんなことしてくれるとは思えないけどね)


そう思いながら隣を見た。

そこには何か諦め切った顔をした亮がいた。

さすがに映画館に入ったら逃げられないと思ったのか、今は大人しくしている。

でも、何故さっきは逃げようとしたのだろう。


(気になるわ………)


でも気になった所で分からない。

そのことに関することは亮の心からも読み取れなかった。

そんな事を考えていると、中の電気が消え真っ暗になった。

そろそろ始まるようだ。

映画の内容は十分合格点を与えられるものだった。

息をもつかさぬ展開(ドカッ)


「……痛っ」


派手なアクション(バキッ)


「……鏡花、やめっ」


そして、ヒロインとのラブロマンス(ベコッ)


「………やっぱりこうなるのか………」


これはお金を払って見に来た甲斐があった(グシャ)


「…………」


映画が終わり、明かりが点いてから隣の亮に話しかけた。


「亮、この映画とってもおもしろかったわね」


しかしそこには…
























































亮であった物体が存在していた…
























































多分、映画にのめりこんだ私が知らず知らずのうちにやってしまったのだろう。


(何か、隣から声が聞えなかった気がしないでもなかったかも…)


人が少なかった事もあり、この事は他の人には気づかれなかったようだ。

さすがに悪いと思い、亮を家まで送っていった。

そして許してもらうまで謝り続けた。

亮は苦笑しながら許してくれた。

でもその時、生死の境をさまよっていたみたい。

何でもその時、きれいなお花畑で鬼達と知り合いになったとか…

その後、亮は私が「映画」という言葉を言うと全力で逃げるようになってしまった。

こりゃ、完全にトラウマになったわね…


























































あとがき

こんにちは、怠け者SS作家のおもちです。

ある天文部の一週間の第二話ということで、今回は七荻鏡花でした。

「こんなの鏡花じゃない」というかたがいるかもしれません。

それは人それぞれ感じ方が違うという事で勘弁してください。

あまり面白くなかったかもしれませんが、

少しでも楽しんでもらえれば幸いです。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送