時をこえる思い
 プロローグ 龍牙作






















雪が降っていた













雪の降る町で……一人の少年と八人の少女たちの物語が悲しみに彩られてしまった



























少年は様々な後悔を抱えつつも、全てが良い方向に向かうように懸命に自分の出来ることをしようとした。

しかし……全てが、上手くいかなかった。










少女は七年という長きに渡ってずっと眠り続けていた。

だが、その長き時間の代わりに、自らの望んだ願いを一つだけかなえることが彼女はできるようになっていた。

彼女は少年のことを大切に思い、少年に関わる全ての人の幸せを願った。

……しかし、大きすぎたその願いは叶うことはなく……たい焼き好きのその少女は再び眠りにつく。











少年と出会う前、少女はこの街であまりにも悲しい別れを経験し、二度と傷つくまいと心を閉ざした。

しかし、再び束の間の悲しい奇跡に関わり、彼女は自分と同じ悲しみを背負った少年の存在を知る。











少年のいとこである優しくも心に弱さをもつ少女は少年や親友のことを案じ、少年の行動を支えていた。

しかしある日、彼女が大切な支えとしていた彼女の母親が突如として事故にあい、予断を許さない状態に陥ってしまう。

すると彼女はまるで信じる支えを失ったかのように全てを拒絶し、部屋に閉じこもってしまった。

そして、生きることすらも拒絶した彼女は母と共に死を待とうとするかのように食も取らず、自室で倒れていた。

今では母や他の少女と同じく、彼女もまたいつ目覚めることもわからない病院での日々が続いている。












その人生をずっと病と共に過ごした少女は、次の誕生日まで生きられないと医者に判断された。

その事実を彼女に伝えたこの少女の姉はその悲しみに耐え切れず、妹をいなかったことにする選択を選んでしまう。

大好きなその姉に拒絶されたこの少女は一度は自ら死を選ぼうともした。

しかし少年と出会ったことで、彼女は彼と残り少ない時間を懸命に生きようとしていく。

そして……最後の時が来たとき、彼女はまだ生きたいという思いを抱えているにもかかわらず、最後まで笑顔だった。

その笑顔を少年の心に残して……彼女はその生涯を閉じる。











その少女の姉は妹が誰よりも愛しかった。

だが、その思い故に選んでしまった選択を最後まで貫き通してしまった。

全てが終わってしまった後、彼女の胸には後悔だけが残り、ゆっくりと心が壊れていった。

ずっと食事すら取っていなかった彼女は日に日にやつれ、自分は生きるべきなのか死ぬべきなのかもわからなかった。

そして今は、病院の床の夢の中でただずっと……彼女は悩み続けている。











狐は自らの記憶と命を犠牲にして少女となり、かつて人のぬくもりを与えてくれた少年に会う。

しかし、捨てられたという思いが残っていた彼女は少年としばらくはいがみ合うばかりであった。

だが、一つのきっかけが彼女と少年の関係を変え、本当の家族のように少年や少年の叔母やいとこと共に彼女は過ごす。

しかし、狐が人となるという束の間の奇跡はゆっくりと幕を閉じていった。

それでも最後まで少年と共に過ごしながら……彼女は少年の腕の中で消えていく。












少女は強く思えば願いが叶うという希望の力と呼ぶべき不思議な力を持っていた。

しかし、その力は人から畏怖の対象とされ、この少女は迫害を受ける。

そうして傷ついた彼女は一つのきっかけのために自らの力と決別し、その自分自身である力と長き戦いを始める。

十年にも及ぶその戦いの果てに、ある時、彼女は大切な親友に怪我を負わせてしまった。

そのことを悔やんだこの少女は、どこまでも純粋なその心故に自らの命を持って全てを終わらせることに決めた。

最後の戦いの末、少年の自分を思う言葉を嬉しく思いながらも……彼女は少年の目の前でその命を絶つ。












あたたかな笑顔を持つ少女はその心のうちでは自分が弟を死なせたと思いながら、自分を赦すことができないままずっと生きてきた。

それでも、せめて今度は大切な親友を幸せにしようと彼女はがんばっていた。

しかし、親友と魔物との戦いに巻き込まれ重傷を負い、さらにはその親友の死を知ったことで生きる気力を失っていった。

だが、生きる気力を失った彼女の怪我の治りは遅く、周りの注意を逃れて自らの命を絶つことは出来なかった。

尤も、そこまで積極的に動く意志すらも希薄であったとも言えた。

……体が自由になればかつてのように全てを他人事のように思って、自らの手首に刃をつける日は遠くはないのかもしれないけれど。

今はただ……全ての感覚を失ったかのように、彼女は病院の天井を静かに見つめている。



















……誰も……救うことができない……  

……自分はただ見ていることしかできなかった……



少年はそう思い、さらには自分の力の無さと自分だけが無事でいることが辛く、腹立たしかった。



その辛い思いのあまり……少年の心は壊れかける……。







だが、たった一人、心をも壊さず少年の側にいることのできた少女がいた。


自らがかつて味わった悲しみに加え、さらに多くの悲しみを少年が味わったことを知った時


心の扉を開けないほど、その少女は壊れてはいなかった。





彼女は心を開き、少年の側にいることを選ぶ。





……傷のなめあいかもしれない……


……支えきれないかもしれない……


……もう二人とも笑うことはできないかもしれない……





たとえそうだとしても、少女は彼の側にいることを選んだ。



少年はその少女の過去の全てを知る。


そして、自分にはまだ出来ることがある事を教えられた。


勇気付けられた彼はその教えられたことに加え、まだ命まで尽きてはいない人たちのために出来ることもある。


そう思い直すこともこの少女のおかげで出来た彼は、再び歩み始めることが出来た。


たとえ既に失ったものが大きすぎることは変わらないとしても……。












確かに少年が少女に気づかされたように、全ては終わってはいなかった。


しかし、失われた命はもはや戻ることはない。


もし……もしやり直せたなら、全てがうまくいく。


人はそう考えるときもある。


しかし、時を…遡ることはできない。






だが







この少年たちの周りには、一つの小さな奇跡の欠片がまだ残っていた。






それは、全ての人たちの幸せを願った少女の願い。






あの願いは、叶わないままに完全に消えたわけではなかったのだ。





そして




全ての悲しみを受け、大きな悔恨をその胸に抱えつつも再び歩みだした少年の強さ。


悲しみをいまだ抱えながら、少年を支えることを選んだ少女の優しさと強さ。




この二つの強き思いが、再び眠りについたはずの少女にもう一度力を与えた。


そして、彼女は再び願い、奇跡の欠片は欠片ではなくなり始める。


欠片でなくなり始めたその願いの力は二人の思いを取り込み、さらにはあらゆる思いと複雑に絡み合い、


新たな光を生み出す。


その光は、時をも揺るがした。


時の流れを守る番人の心をも揺るがすほどに……。











光とは新たな道しるべ。








その果てにあるものは何なのか。


その答えは再び始まる少年たちの物語が示してくれる。








私は最後まで彼らを見届けたい。

















……願わくば、彼らに幸あらんことを……






























あとがき

 お引越し&修正&改訂です。初めて読んでくださった方ははじめまして。龍牙と申します。
 私の初作品であるこの作品を、まだまだ文章も未熟な私ですが、またまた新しい気持ちで改めて頑張っていきたいと思います。
 長らくお待ちいただいた方には本当に申し訳ありません。
 待たせておいてやっぱりこの程度かと思われたら、本当に、本当に申し訳ありません。
 プライベートの混迷はこの夏、更に進んでおりまして少々参っているところです。
 ですが、この作品の進行はまだあきらめるわけには参りません。
 力の限り頑張っていく所存です。
 しかし、始めたのが一昨年の10月なのに過去編も終わらないとは思いませんでした(涙

 さて、このKanonSSは時間逆行物の部類に入ると思います。
 私の作品などよりはるかにすばらしい同種の作品を私自身知っていますが、私なりの彼女たちのありえなかった幸せをよければ見ていってください。
 最初はこのような状態からの始まりできつく思われた方もいるかもししれませんが、今後のためどうかご了承ください。
 それと、時間逆行のジャンルからしてそうなりますが、ゲーム本編の内容をかなり生かして書いています。
 人によっては無理かと思いますが、できればゲーム本編をおやりになり、こんな話もあってもいいかもなと広い心で楽しんでいただけたら幸いです。

 最後に、読んでくださった皆様、並びに管理人K9999さんに御礼申し上げます。それでは。








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