時刻は昼時、お腹が減った人が昼飯を食べる時。

     いくら不真面目な生徒でもその時は起きるという素敵な時間帯。

     だが、そんな生徒は今日は見かけない。

     話は簡単で、今日は休日だからである。



     さんさんと太陽が輝く、そんな休日。

     このような日には親が子どもに外で遊ぶことを強く推奨するだろう。

     そして、ここは子どもが賑わい遊ぶ一つの公園。

     ついでに子どもについてきて井戸端会議をする母親達がいる。



    「……はぁ」



     そんな中、溜め息を吐く男が一人ベンチに座っている。

     その体からは人生に疲れちゃったよオーラが醸し出されているが、遊ぶのに夢中になっている子ども達はそんなもの気にしない。




















































御代はいくら?

第七話

の助け? 容姿に恐れず集金せよ!』




























    「どうすりゃいいんだよ……」











     雲ひとつない空を目を細めながら見上げる男の名を相沢祐一といった。





































    『あのな……非常に言いにくいんだが……』

    『なんだ? 北川? そんなに腰が低いなんて病気か? 熱でもあるのか?』



     そういう潤にやや冗談のテイストを振りかけて返事を返したのが今日の朝。

     まだ、名雪が寝ているような時間帯の話だった。



    『そのな……』

    『な、なんだよ! そんなに溜めるなよ! こ、怖いじゃないか!』



     自分の目の前で非常に言いにくそうにもじもじとしている潤に恐怖を覚えながらも冗談のテイストをかける。

     場所は今いるところと全く変わらない公園のベンチに上だった。



    『その……率直に言うとだな……』

    『お、おう』

    『お前……もうバイトできねぇ』

    『はっ? すまない、もう一度言ってくれ』

    『バイトできねぇ』

    『まじか?』

    『おおマジだ』

    『……………は、ははははははは』

    『あ、相沢?』

    『すまねぇ、一人にしてくれや』

    『あ、ああ……』





















     あれから二時間が経ち、少し汗をかいてきた。

     それでも祐一はその場から動こうとしない。

 

    「はぁ……考えてみれば……当然だよな。今までバイトできてたほうがおかしいもんな……」



     そう、祐一はこの二週間転々とバイトを変えてきた。

     その大半は自分の過失ではないのだが、生来のお人好しが招いた結果である。



    「俺って何してたんだろうな……」



     祐一はその言葉と共にこの二週間を振り返ってみた。

     牛丼屋では己の過失で職を辞退した。

     ファンシーショップでは見事に失敗した。

     茶屋では美汐と真琴のために辞職した。

     ラーメン屋では香里の力で店長が修行の旅にでた。

     百花屋ではわけの分からないうちに首になっていた。



     考えるまでもなく壮絶な職歴だった。



    「つまり、俺は邪魔者扱いなわけだ。まぁ、そうだよな……ここまでバイトを変えてりゃなぁ……」



     ぼやく祐一。

     そう、何度もバイトを変えていたし、その先々でこのような騒動が起きたのだ。

     いくらコネがあろうがこれ以上はバイトすることなぞは不可能だった。



    「北川には迷惑かけたよな……うし! これ以上うじうじしてられねぇ!」



     自らに気合を入れるために頬たたき気合を入れる。



    「北川のコネがないなら、身近な新聞配達でもなんでもやればいいんだ! 時間はかかるが確実だしな!」



     考えてみれば人の力でやろうとしたほうが間違いだったんだ、と心の中で叫ぶと勢いよく立ち上がる。

     二週間ほど前と同じく、思い立った日が吉日。

     彼の座右の銘だ。



    「よっしゃあ! まずはそこらへんの」

    「………………」

    「アルバイトを探し……!」



     さて、突然のことだが後ろから肩を叩かれて、振り向いた先にヤのつく職業の人がいたらどうなるだろう?    

     答えは間違いなくびびる。



     そして、祐一の目の前にはやたらとガタイのイイおっちゃんがいた。

     はっきり言って滅茶苦茶怖かった。

     だから硬直した。

     彼の目がいったのは『美味しいたいやき』という文字が書いてあるエプロン。

     そのエプロンがなかったらヤのつく職業の人と勘違いしたかもしれない。

     まぁ、そのエプロンが更に怪しさを醸し出しているという噂も捨てきれないが。



    「……アルバイト探してるのかね?

    「あ、は、はい!」



     気を付けをした状態のまま祐一は答える。

     やたらと低く、威圧感のある声は恐怖以外の何者でもなかった。

     祐一の体が震えているのは無論目の前のおっちゃんが怖いからである。



    「……うちで働かないかね……

    「え? い、いいんですか?」



     祐一の言葉に対し、エプロンのおっちゃんはスッと指を差す。

     どうでもいいが、その仕草が既に怖い。



    「えと……アルバイト募集中、来たれ若人?」

    「……どうかね……



     その言葉に祐一は暫し考え込む。

     ここでやるというということは、この怖いおっちゃんと付き合わなければならない。

     だが、新聞配達などて溜まる金はたかが知れているし、一ヶ月は最低しなくてはならない。

     一日でもはやくプレゼントを贈った方が良いのは自明の理だ。



     だから祐一は返事を返した。







    「お願いします!」

    「……おけぇ……











     どうでもいいが怖いおっちゃんだった。



















































     時は移ろい、子ども達が家に帰っていく時間。

     真っ赤な夕日を背に祐一は自分の寄生している家に向かって足を進めていた。

     その足取りは心なしか軽く、彼の顔は喜びに溢れていた。



    「よっしゃあ!」



     突然叫ぶ彼に周囲の人たちが何事かと目を向ける。

     だが、彼に至ってはそんな視線など何処吹く風。

     全く気にせずに再び歩みだす。

     はっきりいって怖すぎた。

     だから、遠くにいた某居候も持っていた肉まんを落としかけた。



    「祐一が壊れたぁー!



     という叫びも彼には届いていなかった。



    「ふはははははははははは!

    「あぅー美汐! 美汐ぉ!

    「……………え、えっと……取り敢えずあっちに行きましょうね」



     人通りのなくなった道で笑いながら歩く祐一。

     それを見て親友に泣きつく真琴。

     親友を捕まえて逃げ始める美汐。



     三者三様だった。







































    「祐一くーん!」



     名雪ならすでに夢の住人となっている時間帯、元気なあゆの声が水瀬家に響き渡る。



    「お? なんだ? 用か?」

    「うん。ちょっとお話しようよ!」



     あゆは眩しいくらいの笑顔で祐一に提案する。

     ここのところ夜祐一は何処かへ出かけているので、話せる機会がなかったのだ。

     例え早く帰ってきている時でも、風呂に入ったらすぐに寝てしまう。

     優しいあゆがそんな祐一を起こしてまで自分の欲求を満たす真似が出来るはずもなかった。



    「あーそのな……すまん、あゆ。明日も朝から学校で仕事があってな……早く寝ないといけないんだ」



     もちろん学校云々については嘘だ。

     たいやき屋の店長から朝から仕込みの手伝いをしてくれと頼まれているだけである。

     あゆにプレゼントを贈る手前上、アルバイトをしていることは知られたくない。

     そんな感情が彼に嘘をつかせていた。



    「そうなんだ……残念」

    「すまんな」

    「いいよ! 祐一くんも忙しいんでしょ? いつでも話せるもん!」

    「ああ、本当にゴメンな。じゃあ、また明日な!」



     そう言って、祐一はあゆの頭を撫でる。

     身長差が上手い具合に重なって、あゆの頭が丁度良い場所にあるからついやってしまう行為であった。



    「わ、ゆ、祐一くん! 止めてよ!」



     それに対し、あゆは顔を真っ赤にして拒否する。

     本当は嫌ではないのだが、どうしても恥ずかしさが付いて回るのだ。



    「おっと、すまん。じゃあ、おやすみ」

    「うん、おやすみだよ」



     頭からどけられた手が今度は振られ、祐一はドアの向こうへと消えて行く。







     あゆは暫くその場所に立っていた。



    「うん、祐一くんは忙しいんだもん。邪魔しちゃいけないもん」



     あゆは自分に言い聞かせると、ドアを開けて自分の部屋に入っていく。

     同居人はすでに夢の世界へと旅立っており、静かに寝息が聞こえてくるだけだった。



     同居人を起こさないようにそっと蒲団の中に入り込む。

     水瀬家に厄介になると決めたとき、祐一と共に選んだ蒲団だった。

     できるだけ安い蒲団を探していた時に、祐一がこっそりと援助してくれた蒲団。

     あの冬が終わって、夢が終わった後のすぐの出来事だったが、あの時の喜びは今でも思い出せた。



     さびしいよ……



     そっとあゆは心の中で漏らす。

     秋子がいる。

     名雪がいる、真琴がいる。

     家族は感じられる。



     だが、彼女はさびしさを感じていた。

     祐一と話ができないでさびしくないわけがなかった。



     祐一とちゃんと話をした記憶があるのは二週間目のあの買い物。

     それ以降ちゃんと話をした覚えはなかった。

     二週間という長い期間は彼女に重くのしかかっていた。



     もしかしたら祐一くんに嫌われるようなことしたかも……



     という考えが頭に生まれるくらい。

     それほどに彼女には祐一と話せないことが重くのしかかっていた。





     祐一くんと話したい。





     その感情が生まれる。





     でも、祐一くんに迷惑をかけたくない。





     他方ではその感情が生まれる。





     我侭言いたいけど、迷惑にはなりたくない。嫌われたくない。





     それがあゆの全てだった。











     あの冬に持っていたバックからそっと天使人形を取り出す。



     願い事を叶えてくれた思いの結晶。



     祐一との思いの結晶。



     もうそれに願いをすることは間違っている。



     凄い願いを叶えてくれたそれに願いをするのは間違っている。



     だが、彼女は願い事をせずにはいられなかった。



     さびしかったから。



     あまりにもさびしかったから。



     些細な願いを一つだけ。























































    

『祐一くんとお話できますように……』











































決算

  目標額                        35,000

  所持金                        24,100

  収入                              0

  支出                              0

  結果                         24,100

  目標差額                       10,900




























































後書き

T:えとえと、路線が変わった罠?

T:寧ろ、自分の作品に感化されたとかいう阿呆な始末?

T:つっこみはBBSもしくはメールでどうぞ(汗

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