9/24 瑞佳祭り










1、『もう二度と』


 瑞佳「ねぇ、浩平?」
 浩平「……」
 瑞佳「……寝てるんだね。いいよ、ずっとこのままでいたいな」
 浩平「……」
 瑞佳「この重さが浩平がいる証なんだから……」






2、『君がいない部屋、誰もいない部屋』


 少女「……なんだ、私は要らないんだ」

 ここではない、どこかで。






3、『天体観測』


 (届かないんだ、いくら手を伸ばしても)
 (そうだね。届かないね)
 (掴めないんだ、どれだけ足掻いても)
 (そうだね、掴めないね)
 (どうしたらいいのかな?)
 (何もしなくていいと思うよ)

 (届かなくても、掴めなくても、わたしは側にいてあげるから)

 遠い世界を眺めてる。






4、『だからそれは別世界です』


 浩平「何故もっと早く起こさない!」
 瑞佳「浩平が早く起きないのがいけないんだよ!」
 浩平「ええい、何をいっているか! 精進がたりん!」
 瑞佳「無茶苦茶だよ!」
 浩平「そ、そうだ! 長森! 時を止めろ! 時を!」
 瑞佳「え?」
 浩平「お前ならできるはずだ! コマンドは……」
 瑞佳「そんなことできないよ!」






5、『迂闊』


 浩平「しまった、あれをしても長森しか動けないから意味ねえじゃないか」
 瑞佳「だからできないよ……」






6、『追うもの、追われるもの』


 瑞佳「こーへー! どこにいるんだよ!」
 浩平「ふっ、ここだけは見つかるまい」
 瑞佳「ベッドの下にも、クローゼットの中にも……どこにいったんだよぉ!」
 浩平「ふっふっふっ」
 瑞佳「窓の外にもいないし……遅れちゃうよー!」
 浩平「流石にトイレまでは入ってこれまい! ぬははははー!(寝言)」






7、『そこまでやらないと幼馴染じゃいられない……の?』


 瑞佳「こうなったら、全部探すしかないよ」

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

 瑞佳「見つけたよ! 早く学校に行くよ!」
 浩平「ま、まて! ふつートイレまで来るか!?」
 瑞佳「問答無用だよ!」
 浩平「ま、まて、まだズボンが! ぎにゃああああああ!」






8、『人類は進歩します』


 瑞佳「……」
 瑞佳「……」
 瑞佳「そこっ!」

 窓の外に枕を投げる

 浩平「ぐはっ……何故、俺がここにいると……」
 瑞佳「馬鹿なことやってないで、学校行くよ!」
 浩平「お、おのれぇ……見ておれ」






9、『更なる高みへ』


 瑞佳「……」

 浩平の部屋。
 一向に起きない彼。
 瑞佳はカバンの中に手を入れて……。

 時計『おすっ! おれ、バニ山バニ夫!』

 浩平「わかった、わかった! 起きるから止めろ!」
 瑞佳「おはよう、浩平♪」






10、『もはや敵なし』


 瑞佳「……」

 浩平の部屋。
 主のいないベッド。
 瑞佳はおもむろに座り込み……。

 時計『オスッ! おれ、バニや――』

 浩平「わかった、わかった、わかったから!」
 瑞佳「……いつの間に作ったの……屋根裏部屋なんて」






11、『苦労人さんなんです』


 留美「そういえば、瑞佳の趣味ってなんだっけ?」
 瑞佳「え?」
 留美「だから、瑞佳の趣味よ」
 瑞佳「えっと……得意なのはコーラスかな」
 留美「……あのさ、そのカードはなにかしら?」
 瑞佳「だ、だって……浩平を起こしてばっかりで面倒みてばっかりで……」
 留美「もういいわ……(自分の特技を思い出さないなんて……)」






12、『好きなもの』


 留美「そういえば、瑞佳って猫がすきなのよね?」
 瑞佳「うん。好きだよ」
 留美「へー、今度見に行ってもいい?」
 瑞佳「いいよ。だけど……」
 留美「だけど?」
 瑞佳「驚かないでね」
 留美「え、ええ……」






13、 『意外や意外』


 留美「ところで、なんでいつも牛乳ばっかり飲んでるの?」
 瑞佳「あ、それ……」
 浩平「それはだな。長森は炭酸が飲めないお子様だからだ」
 留美「え? そうなの?」
 瑞佳「う、うん。嫌いなんだよ」
 浩平「つまり、お子様だということだ。気にしなくていいぞ、長森」
 瑞佳「……」
 浩平「うんうん。誰も今時炭酸が飲めないか――」
 瑞佳「浩平のバカァ!」

 浩平「俺がなにかしたか?」
 留美「高校生に子ども子ども連射するんじゃないわよ、あんたは」






14、『バカはフォローもバカだ』


 瑞佳「うぅぅ、炭酸が嫌いだからって子どもっていわなくても」
 浩平「長森、悪かった。牛乳ばっかり飲むことにもちゃんと意味があるんだ」
 瑞佳「……」
 浩平「ほら、牛乳を飲んでるから、お前の胸は――」
 瑞佳「バカァ!」

 浩平「……俺が何をした?」
 留美「あんた、セクハラって言葉知ってる?」






15、『そして、バカは伝説となる』


 浩平「長森! 悪かった!」
 瑞佳「……」
 浩平「つまり、あれだ。俺が全面的に悪かった。だから、帰りにクレープでも食って帰ろう」
 瑞佳「……ううん。いいよ、謝ってくれるだけで。でも、二度といわないでね」
 浩平「ああ、二度といわないぞ。さぁ、クレープでも食いに行こうじゃないか」
 瑞佳「浩平……」
 浩平「まぁ、カロリーは高いが問題ない。大丈夫だ。長森のウエストが一週間前より0.5cm大きくなったことなんて気にしなくていいからな」
 瑞佳「……」
 浩平「うん? どうし――」
 瑞佳「バカァァァッァァァアアアア!」

 浩平「お、俺が何をしたぁー!?」
 留美「あんた一回死んできたほうがいいんじゃない?」






16、『ふとした疑問』


 護 「で、何故折原が長森さんのウェストの推移を知ってるんだ?」
 瑞佳「え、あ、そ、それはそのっ……」
 浩平「そこで一々うろたえるんじゃない、ばか」

 再度付き合い始めてから、早3ヶ月。






17、『疑惑の視線』


 護 「ま、まさか妊娠!?」
 浩平「もういいから、お前は黙ってろ」
 瑞佳「……」
 浩平「……なんで黙るんだ、おい」
 瑞佳「……」
 浩平「何を指折り数えてる」
 瑞佳「……」
 浩平「……まあ、何だ」
 瑞佳「……」
 浩平「飯でも食うか、うん」

 浩平が戻ってきてから、早3ヶ月。






18、『幼馴染ですから』


 瑞佳「えっと、これをこうして。ここを……」
 留美「ねぇ、瑞佳。何してるの?」
 瑞佳「え? 簡単だよ。浩平の部屋の掃除だよ」
 留美「……」
 瑞佳「え? どこかおかしいかな?」
 留美「いや、なんでもないから……(ベッドでいびきをかいている浩平を眺めながら)」






19、『ちょっとした疑問』


 留美「こいつにやらせたほうがいいんじゃないの?」
 瑞佳「ダメだよ。私が一人でやったほうが十倍早いから」
 留美「……はぁ」






20、『そこまでは……』


 留美「あれ? なんでクローゼットの裏だけはやらないの?」
 瑞佳「あ、そこは……その……」
 留美「?」
 瑞佳「い、言いたくないものがあるから……」
 留美「……なるほど」






  21、『それだけは』


 瑞佳「あのね、浩平」
 瑞佳「私は浩平のためなら何でもするし、浩平は私に何をしても構わないよ」
 瑞佳「朝起きれないなら私が起こしてあげる」
 瑞佳「お腹が空いたら私が御飯を作ってあげる」
 瑞佳「浩平が望む限り側にいるし、浩平が望むなら二度と干渉したりしない」
 瑞佳「だからね、浩平……」

 瑞佳「浮気だけは止めてほしいな、うん」






22、『その後』


 浩平「いや、もう、七瀬なんかとは比べ物にならないくらい怖かったぞ」
 七瀬「どうしてそこでアタシの名前が出てくるのよ」
 瑞佳「浩平が浮気するからいけないんだよ〜。それに私が怒ったってそこまで怖くないもん」
 七瀬「瑞佳? いまの発言の真意について二、三聞きたいことがあるんだけど?」






23、『うらやましくなんかない』


 佐織「おーい、瑞佳ー!」
 瑞佳「あ、佐織。どうしたの?」
 佐織「今度の土曜日、みんなで商店街に繰り出そうと思うんだけど。瑞佳は空いてる?」
 瑞佳「あー、ごめんね? ちょっと都合が悪いんだよ」
 佐織「また王子様と約束なの? え? このこのっ! ……まあ、予想はしてたけど」
 瑞佳「いつもいつもごめんね」
 佐織「いいっていいって。私達はもうしばらく独身貴族を堪能してますからねー」
 瑞佳「……もしかして僻んでない?」






24、『誰も祝福しなくても』


 沙織「にしても、あの奇天烈王子。こんなお姫様放って、一年も何してたのやら」
 瑞佳「…………う〜ん、奇天烈はちょっとだけ言い過ぎなんじゃないかな?」
 佐織「普段の言動がものを言う。そうは思わんかね、瑞佳クン?」
 瑞佳「それ言われちゃったら反論できなくなるよ……それ、ちょっと似合わないかな?」
 佐織「まあ、キャラじゃないしね。でも瑞佳でもあれには反論できないんだ?」
 瑞佳「浩平だからね。でも、それでもやっぱり浩平は浩平なんだよ」
 佐織「あー、はいはい。惚気るのは一日三回までに抑えといてね」
 瑞佳「もう……」






25、『うらやましい』


 護 「折原、今度の土曜日空けとけよ」
 浩平「住井、開口一番いきなりそれか? ……んで、何やるんだ?」
 護 「まあ、ちょいと仲間内でカラオケにでも行こうと思ってさ。お前も偶には良いだろ?」
 浩平「そうだな、まあたまにならカラオケに行っても良いかな。ってことで今週はパス」
 護 「……またデートかよ」
 浩平「ちょっと一緒に映画見て飯食って公園で一休みして買い物するだけだって。大げさだな」
 護 「それをデートって言うんだっ! お前なんか薔薇色の牢獄に閉じ込められちまえ!」
 浩平「あ、こら、やめ、苦し……」

 佐織「……醜い争いよね」
 瑞佳「あ、あはは……」






26、『阿吽の呼吸』


 浩平「長森――」
 瑞佳「はい、鞄はここ!」
 浩平「長――」
 瑞佳「ご飯はないよ」
 浩平「な――」
 瑞佳「はやく走って! 遅れちゃうよ!」
 浩平「がもり、そこから先は工事中……っておそかったか」
 瑞佳「きゃーー!」






27、『直談判』


 瑞佳「呼称の変更を要求するよっ」
 浩平「……」

 直訴と書かれた封筒を手に。






28、『判決』


 浩平「あ、長森、それ取ってくれー」
 瑞佳「……」
 浩平「おーい、長森ー」
 瑞佳「……」
 浩平「長森? 長森ってば」
 瑞佳「……」
 浩平「聞えてないのか? なーがーもーりー」
 瑞佳「……」
 浩平「……」 

 浩平「……瑞佳」
 瑞佳「うん、わかったよー♪ ちょっと待っててね♪」






29、『春待つ人』


 瑞佳「待ってるから……ずっと待ってるから……」

 ウサギの時計を抱きしめながら。






30、『たった一つの小さなのわがまま』


 みずか「ここにいて……ずっとここに……」

 白い世界で。






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