やぁみんな、俺は良い子と正義と可愛い女の子の味方、折原浩平だ。

これからの将来を担う子供たちに、夢と希望とその他色々を与える、とっても素敵なお兄さんだ。



まぁ早い話が、俺は保父さんをやってるんだよ。

自分でも何でそんなことしてんのかよく分からんのだが。

まぁ、永遠から帰ってきて、色々とやったりヤッたりしてるうちに、気が付いたら就職してたって感じだな。



それはさておき、ここにはマイラバーでもある七瀬もいるし、仕事に不満などない。

それにこれから社会へと巣立ってゆく子供たちに、様々なことを教えることはとても楽しい。

何より、この仕事はやり甲斐がある。

ここで俺が教えたことが、彼らの人生に役立つことを心から願う……





「おりはらせんせー、できたよー」

「こんなかんじでいいのー?」

「うん? あー、まだダメだな。ピッキングはスピードが命なんだ。今のタイムじゃあ合格点は出せないな」

「何教えてんのよっ! あんたはぁっ!」



ドッゴオォォンッ



ふっ……愛が痛いぜ。





「七瀬……もう少し手加減してくれてもいいんじゃないか?」

「そんなことより、何てこと教えてんのよっ!」

「ピッキング技術だが」

「当たり前のように言わないでっ!」

「いいか、良く聞け、七瀬。ピッキング技術の習得は、手先を器用にする意味でも重要な意味を持つんだ」

「手先がどうこう言うんなら、折り紙とかでもいいでしょうが!」

「わかってないな……洗練されたピッキングの技は、もはや芸術といってもいいくらいなんだぞ?」

「保育園で教えることじゃないわよっ!」



ズゴンッ



「おりはらせんせー、だいじょーぶ?」

「だいじょーぶー?」


頭にもう1つコブをこさえた俺を心配してくれる園児達……優しいなぁっ。


「気にしなくてもいいわよ、まいちゃん、みずかちゃん。こんなヤツ放っときなさい」

「うん、わかったー」

「はーい」


七瀬め……余計な一言を。

その言葉に従っちゃうこの子たちも何だかなぁ、ではあるけど。















大育児世界大戦
















「世界は関係ないだろう? 世界は」

「何言ってるんだよ、浩平」

「放っときなさい、瑞佳。いつもの病気よ」


人がせっかくタイトルの不条理を訴えたと言うのに、マイラバーは冷たいね。

長森も長森だ。


「まぁ気にするな。大したことじゃない」

「それなら言わないでよね」

「浩平には付いていけないもん」


ちっ……長森も言うようになったな。

ったくよ、ベッドの上ではあれだけ……


「折原……今何か変なこと考えなかった?」

「そんなまさか」


鋭いな……さすがは七瀬だ。

長森とは色々あって、割り切った『大人の付き合い』ってやつを時々楽しんでたりするんだが……

これがバレたら半殺しじゃ済まないだろうからな。

何としても隠し通さねば!


「浩平は真顔で嘘つけるから、信頼しちゃダメだよ、七瀬さん」

「えぇ、身に染みて分かってるわ」

「ははは、少しは信頼してくれよ」


ヤバい、雲行きが怪しくなってきやがった……どうにかして話を逸らさねば。





「はぁ〜、疲れた〜」

「あ、沢渡さん、お疲れ様」

「どうしたの? ずいぶん疲れてるみたいだけど」


ナーイスッ! 沢渡、感謝するぞ! タイミング良く休憩にきてくれてありがとう!

あぁっ……救いの手は差し伸べられるもんなんだなぁ。


「折原っ、あんたいつまで休憩してるのよぅ」

「何で俺だけなんだよ。七瀬とか長森だっているのによ」


ちっ、救いの手ってわけじゃなかったのかよ。

にしても、部屋に入っていきなり人を指差すのはどうかと思うぞ。


「あんた、いつも楽ばっかしてるじゃない」

「そうだよ」

「そうよ」

「サラウンドかよ……」


ったくしゃーねーな、行くか。


「もう変なこと教えるんじゃないわよ」

「大丈夫だ、心配するな」

「何するつもりなの?」

「トランプ投げで、野菜を切ろうかと」



ガスゥッ



お兄さん、時計投げるのは反則だと思うな……










「あ、おりはらせんせー、でっかいこぶー」

「ホントだー」

「すごーい」

「……」


慰められてるんだろうか? バカにされてるんだろうか?

何だか、どっちだとしても、社会人として致命的な気もするが。


「ねーねー、あそぼー」

「よし。じゃあここにトランプがあるから、あとは野菜を用意すれば……」

「やるなって言ってるでしょ!」



ドゴッ



「ぐぁっ……飛び膝蹴り」


空中にいる敵に大ダメージだっ!

でも、どっちかというと、踏ん張ってる分、地面に立ってる敵の方がダメージ大きそうだけどな。

そこんとこどうなんだ?

まぁ、今さら竜のヤツの6番目の話も意味がないか。





「あんたね、もうちょっとマシなこと考えなさいよ!」

「わ、わかったよ……本を読んでやることにしよう」

「それなら、まぁいいわ」


そう言って歩き去る七瀬……ふぅ、助かったぜ。


「なによんでくれるのー?」

「わたし、かみしばいがいいー」

「ぼくもー」

「はっはっは、まぁ落ち着きなさい」


こんな時のために用意しておいたんだよ、“コイツ”を。


「さーて、読むぞー」


全員が俺の周りに集まる。


「えー、『いづれの御時にか、女御、更衣、数多さぶらひ給ひけるなかに……』」

「何てもん読んでんのよっ!!」



バキィッ



「テンプルッ?!」


くっ……七瀬、人体急所を右フックで貫いてんじゃない……


「何でそこで源氏物語なのよっ?!」

「お前は日本文学史に名を残す名作をけなすというのか?」

「情操教育に悪すぎるでしょうがっ!」


ちっ……いっつもいっつもいいとこで邪魔しやがって。





「ふふん……」

「何よ? その不気味な笑いは」


むかっ。

素敵に無敵な美男子スマイルを不気味とか言いやがったな?!

もう容赦しねーぞ。



ピイィィーーーッ



「? 口笛? 何のつもり?」

「ふっ……七瀬、お前はもうチェックメイトだ」

「はぁ?」

「みゅーーっ」



ぐいっ!



「ぎゃぁーーっ!」





「ふっ、召喚魔法『みゅー』だ」


勝ち誇る俺。

七瀬の髪を引っ張って楽しんでる繭。

髪を引っ張られて涙目の七瀬。

正義は勝つッ!


「いたいいたいいたいーっ!」

「みゅーっ♪」

「たのしそう〜」

「わたしもー」


おぉっ、他の園児も参戦したな。

ななぴー大人気だ!


「しかし、ぎゃぁーっていう悲鳴は、乙女としてどうなんだ? おい」

「いたいいたいっ、やめてやめてっ」

「みゅ〜♪」

「あははっ、おもしろーい」

「わーい」


聞く余裕もないのか……





「まぁ、ここは若い者同士に任せて……」


とりあえず、園児との触れ合いを楽しんでいる七瀬の邪魔はいけないな、うん。

早々にここを去ることにしようか。

アディオス、七瀬。


「覚えてなさいよっ! 折原ーっ!」


七瀬の断末魔の叫びをBGMに、俺は歩く。


「みゅーっ♪」

「髪引っ張らないで〜っ!」


はっはっは、七瀬は愉快なヤツだな〜。















さーて、と……そろそろ昼寝の時間なんだが。

まぁ、あっちは七瀬に任せときゃ何とかするだろうし。

俺はどうするかね?


「お?」


まだ砂場で遊んでる子がいるな。


「えいえんはあるよ……ここにあるよ……」

「そういうネタを使ってんじゃない、みずか」

「え〜、おもしろいところなのに〜」

「まいも付き合わんでいい」


大体、そのネタは色々トラウマなんだよ。

折角帰ってきたんだぞ?


「ぶぅ……」

「むぅ……」

「はいはい、拗ねない拗ねない……ほら、昼寝の時間だぞ?」

「「は〜い」」










「ふぅ〜、疲れた疲れた」

「浩平、何か疲れることしたの?」

「七瀬の相手がなー」

「こっちのセリフよっ!」



ボゴォッ



「リバーッ?!」


ぐはっ……呼吸が止まる……

そして時は動き出す。


「何しやがる?!」

「あんたねっ! あの後私がどれだけ大変だったと思ってるのよっ!」

「ふん、そのくらいで音を上げるなぞ、通常の3倍早いわッ!」

「意味がわからないよ、浩平」


まだまだ青いな、長森。

ふむ……赤い七瀬と緑の長森……結構いいかも。


「あの顔はまたわけの分からないことを考えてるわね」

「浩平、バカだもん」

「ふん、凡人に理解してもらおうなどとは思っとらん」


とにもかくにもこのように、園児の昼寝の時間は、俺達にとっての休憩時間でもあるのだ。

いやぁ、ホント楽な職場だ。















「せんせー、ばいばーい」

「ばいばーい」

「おぉっ、また明日なー」


そんなわけでどんなわけで、最後の園児達も家に帰っていった。

あとは片付けと明日の準備を終われば、俺達の仕事も終わりだ。





「さて、準備しとかないとな」

「何の?」

「明日は高速スライダーの投げ方を教えてやろうかと思ってな」

「あんたはアホかっ!」



ガスゥッ



「ジョーッ?!」



って、顎のことをジョーって言うことを知らない人には、真っ白に燃え尽きたボクサーを呼んでるようにしか聞こえんな、このセリフ。





「何考えてるんだよ、浩平……」

「む……た、確かにそうかもしれんが……」

「やっと認めたのね」

「うむ、俺も先にフォークから教えるべきかとは思っているからな」

「そうじゃないでしょっ?!」


う……耳にキンときた。


「いや、あいつらにはフォークは難しいらしくてな……習得できたヤツがいないんだよ」

「何すでに教え始めてるのよっ!」



ドボォッ



「ストマックッ?!」


くそっ……もう、KO寸前だぞ。

セコンドがいたら間違いなくタオルを投げ入れているだろう。





「いいか、七瀬。この保育園から未来のエースピッチャーが生まれるかもしれんのだぞ?」

「あんたね、ここはそういうところじゃないの」

「いや、才能豊かな子供は多いぞ。何せマッセをマスターできた子がいるからな」

「ビリヤードなんて教えてんじゃないわよっ!」

「いやぁ、俺もさすがにあれを習得できる子がいるとは思わなかったぞ」

「浩平……何考えてるの?」

「子供の才能を伸ばしてやるのが俺の務めだからな」


思いっきり胸を張る。










「すいませ〜ん」

「ん?」


あれは……沢渡の保護者の相沢だな。


「あ、相沢君、ご苦労様」

「いえ……あの、真琴とまいは?」

「祐一遅い」

「ゆーいちっ」


お? まいがいつものよーに相沢に抱きついてんなー。

それを見て沢渡も何か不機嫌になってるし。


「全く……お前も大概だな。沢渡にまいの二股か……」


呆れたジェスチャーを交えて、思いっきりからかってやる。

お、やっぱり機嫌が悪くなりやがった。

やれやれ、二股なんぞかけてるのが悪いんだよ。


「気にしない方がいいわよ、相沢君」

「えぇ、そうですね。あ、七瀬さん、長森さん」

「ん? なぁに?」

「何かな?」


う、相沢のヤツ、こっち見てニヤって笑いやがった……何考えてんだ?

むぅ、ヤな予感がするな。

三十六計逃げるにしかず。

ここは1つ戦略的後方前進だっ!


「逃がさないわよ」

「ぐぁっ、は、離せ、七瀬!」


襟を掴むな! 首が絞まるっ!


「こんな写真があるんですが」

「何…………こうへい?」

「…………折原、覚悟はいい?」


ゆっくりとこっちの方を向く七瀬と長森……こっ、こえぇっ!


「どうして、浩平が川名先輩と仲良く手を繋いでる写真なんてあるのかな?」

「そっ、それはあれだ。先輩は目が見えないから……」

「ふーん……じゃあ、何でホテルから出てきてるところなのかしら?」

「うぁっ……」


な、何でそんな写真が存在してんだよっ?!


「あぁ、それは住井って人にもらったんです」


住井のヤローッ! まだ長森のこと恨んでんのかよ?!


「くそぅっ……あのヤロウ、生かしちゃおかねぇっ!」


絶対に死なすッ!


「自分の心配をした方がいいんだよ……」

「瑞佳だけじゃなかったなんてね……」


知ってたのかよ?!


「なっ、何で知ってるんだ?!」

「わからないわけないでしょ? まぁ、瑞佳だけならって思ってたんだけど……」

「浩平……私たち2人を裏切った罪は重いよ……」


修羅が……修羅がいる……


「さ、帰るか、まい、真琴」

「うんっ」

「あぅ……ほ、放っといていいのかな……?」

「いいんだよ、自業自得だ」


相沢ーっ! 覚えてろよーっ!


「それじゃ、失礼します」

「さよーならーっ」

「えっと……ま、また明日ねっ」


逃げやがった……


「帰り道は気をつけてねー」

「また明日会いましょうね」

「えーっと、それじゃ俺も……」

「「逃げるなっ!」」















その日、俺は今までの人生で最も星に近づくことができた。

みずかが、やっぱりえいえんにくる? とか言ってくれたのには、本気で悩んだ。

でも、次の日にはちゃんと保育園に出勤したんだぞ、俺は。

七瀬と長森には化け物扱いされたがな。





とまぁ、これが俺の日常だ。

ケガしてなかったら、夜の方が色々大変だったりするんだが、子供は知らなくてもいいことだ。

まぁ、それはいいさ。

とにかく、今度は園児たちに百人一首の逆さ読みをやらせてみるか。


「やるんじゃないッ!」



ガスゥッ



……いい加減血が足りん。

今日のところはこれくらいにしておいてやろう。

だがっ! いずれ第2、第3の折原浩平が……


「黙りなさいッ!」





暗転。



めでたしめでたし……?


















後書き



わはー、もう何なんでしょう? これ。

どもです、GaNです。

構想、執筆合わせて2時間の駄作です。

K9999さんが半分以上冗談でカキコしたことを、実現させてみました。

もうあれです、このSS自体がギャグです、つまりは。

こんなものでお目汚しさせてしまい、すみませんです。

えー……とりあえず、この辺で。

連載のヤツはちゃんと頑張りますので、どうかご勘弁を。





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